私は、キャリアコンサルタントとして、人との関りにおける自らの使命をこう定めています。
「人の健全で全人的なキャリア発達の実現」を支援すること。
あくまでも使命を定義付ける言葉なので少し難しい言い回しになってしまいましたが、もう少し簡単に言うと、全ての人が「ありのままに自分らしく生きられる」ようなキャリアを歩んで欲しいということです。
私が、キャリアコンサルタントとしての使命をそう考えるようになったのは、「カウンセリングの神様」と呼ばれている心理学者カール・ロジャーズ博士の思想を学んだからです。
ロジャーズ博士は、著書にこう書いています。
クライアントと私の関係の中で浮かび上がってきた、この人生の目的を表現するのに最も適切な言葉は、ゼーレン・キルケゴールの次の言葉であろう。
―つまり「自己が真にあるがままの自己であるということ」
(to be that self which one truly is)である。
キャリアコンサルタントの間では、キャリアとは職業のみならず「人生そのもの」であるという解釈が広まりつつあります。
そうであるならば、ロジャーズ博士が言う「人生の目的」とは、人としての「キャリア」が発達していく方向性ということになるでしょう。
つまり、「自己が真にあるがままの自己であるということ」を、自らの人生において仕事や生活の場において実現できることが、「人の健全で全人的なキャリア発達の実現」なのです。
私は、ロジャーズ博士の言葉を、そのように解釈しています。
実のところ、今の世の中では、「自己が真にあるがままの自己であるということ」を実現できずに、生きづらさを抱えている人が増えているような感じがします。
例えば、企業で働くビジネスパーソン。
年収が上がった、ポジションが上がった。
でも、「ひと」として生きていない。
「ひと」として成熟していない。
心からの幸せを感じて生きていない。
「もっと市場価値を上げろ!」
「どこにでも通用するスキルを磨け!」
競争社会の声に脅されながら、不安を抱えて生きている。
このような人々は、「職業人・企業人」として「成長」できていたとしても、生き生きとした生命である一人の人間(ひと)としての、健全な発達が阻まれているのかもしれません。
きっと、社会の風潮や他者からの評価を気にしすぎてしまい、「職業人・企業人」という「仮面」に縛られてしまうのでしょう。
「仮面」の内に輝きを秘めている「真にあるがままの自己」に出会い、「ありのままに自分らしく生きられる」ようになること。
それこそが、よく使われる「自己実現」という言葉の本当の意味なのです。
全ての人に、生き生きとした「ひと」として、「ありのままに自分らしく生きられる」ようになり、生命の限りない可能性を開花させて欲しい。
私は、キャリアコンサルタントとして、心からそう願っています。
そのために、出会う人それぞれの「自己実現への道」を共に歩いていくのが、私の使命なのです。
※参考文献リンク