企業に勤める人の多くは、人事異動などで色々なポジションを経験してキャリアを積んでいくと思います。
私も、サラリーマン時代には、事業組織の営業所長だったり、組織横断的なプロジェクトのリーダーや、企画担当職など、様々な立場で仕事をさせてもらいました。
その中で、事業組織のマネジャーを務めていた時に、肝に銘じていたことは、「部下を犬死にさせたくない」ということでした。
私は歴史の本を読むのが好きなのですが、特に太平洋戦争においては、多くの国民が無駄に命を失うまさに「犬死に」というケースがあまりにも多いことに心を痛めていました。
なぜ国民が犬死にするかといえば、当時の軍の上層部が打ち出す戦略や目標そのものが誤っていたからです。
その過ちについては、「失敗の本質」という名著に詳しく書かれています。
そもそもゴールとなる戦略や目標そのものが間違っていれば、いくら努力したとしても、誤った方向に進んでいくだけで、正しい成果を得ることはできません。
太平洋戦争では、「アメリカに勝つ」という目標そのものが、明らかに無謀で不適切であったため、国民がまさに命がけで戦ったのに、最後は焼け野原になってしまいました。
自分は、マネジャーとして組織の上に立つのであれば、当時の日本軍のような過ちを犯したくはないと思っていました。
もちろん、現代の企業においては、社員が命を失うことはあまりありませんが、経営戦略とそぐわない不適切な目標設定によって、努力しても成果があがらないことはあるでしょう。
「犬死に」とは、無駄な報われない努力によって、貴重な一度きりの人生の時間を空費するということだと思います。
では、努力が報われる可能性を高めるにはどうすればよいのか?
以前の記事にも書きましたが、私は、このような公式に沿って考えるべきだと思います。
行動量×信念×戦略合理性=努力が報われる可能性
つまり、報われる努力と、無駄な努力があるということです。
「行動量」とは、目標の実現に向けて実際に行動した時間などの量です。
「信念」とは、目標達成への情熱の強度のようなものです。
この二つは、わりとわかりやすいと思います。
ちょっと難しいのが、「戦略合理性」だと思います。
例えば、だいたい次のようなことを考えているかどうかです。
- 経営戦略の実現に結びつく適切な目標が設定されているか?
- 目標を達成するために、どのような計画を立てるか?
- これから着手しようとする行動は、どのような結果をもたらし、その次にどんな打ち手を準備しているのか?
- 計画の正しさを裏付ける根拠はあるのか?
このようなことをしっかり考えていないと、例え「行動量」が多く「信念」の強度が高くても、「的外れな努力」になってしまい、報われずに終わってしまう可能性が大きくなってしまいます。
だから、マネジャーとして、部下を「犬死に」させない、無駄な努力で人生の貴重な時間を空費させないためには、「戦略合理性」の高い、「適切な目標」を設定するために時間と労力を最大限につぎ込む必要があります。
そして、目標の設定においては、部下とじっくり話し合ってお互いが心から納得することも重要です。
まさに、「急がば回れ」ですが、たとえ時間がかかったとしても「適切な目標」さえ設定できれば、後は走るだけです。
もちろん、走っているうちに、状況が変わることもあるので、目標を見直さなければならないときもありますが、常に目標を設定する際に「戦略合理性」を意識していれば、部下も自分も「犬死に」する確率は、大幅に下がることでしょう。