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ビジネスパーソンが、世界を変える「愛と力」を育むために

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※画像はイメージです。

私は、社会起業家としての志を持つビジネスパーソンには、「愛」と「力」の両方が必要だと思っています。
今日は、その「愛と力」をどう育むかということについて、お話します。

リコーグループを創業した市村清氏は、生涯の信念として「三愛精神」を提唱していました。

「人を愛し、国を愛し、勤めを愛す」

これが三愛精神を表している言葉です。

市村氏は、三愛精神についてこう語っています。

私の提唱する三愛主義とは、人を愛し、国を愛し、勤めを愛する精神であるから、世界人類の一員として、まずすべての人を愛すること。日本人としては、祖国日本を愛すること。そして自己がこの世に生をうけた意義を果たすため、自分にあたえられた任務を愛して一生懸命にはげむこと。

この三愛精神は、リコーグループの創業の精神にもなっていますが、一企業の枠を超えて、世界にイノベーションを広げるような影響を与えてきたように思えます。

アップルの創業者であるスティーブ・ジョブス氏は、イノベーションについて語る際に必ず引き合いに出される人物です。
イノベーションの創出を目指す多くの企業が、アップルから学んでいます。。
そのスティーブ・ジョブス氏が敬愛していたのは、ソニーの創業者である盛田昭夫氏でした。
ジョブス氏は、アップルを経営していく上で、かなり多くの事をソニーから学んでいました。

では、盛田昭夫氏は、誰を敬愛し、誰から経営を学んだのでしょうか?
世間から「アイディア社長」や「経営の神様」と言われていた市村氏の周りには、自然と多くの若手経営者や文化人が集まり、「市村学校」と名付けられたコミュニティができていました。
盛田昭夫氏も、その「市村学校」で市村氏からの薫陶を受けていました。
このような事実を見てみると、以下のようなイノベーションの系譜が浮かび上がってきます。

市村清(リコー・市村学校)
 ↓
盛田昭夫ソニー
 ↓
スティーブ・ジョブス(アップル)
 ↓
■世界中のイノベーションを目指す人々

それぞれが創り出してきた商品やサービスは違っていても、顧客がそれを体験したときの感覚のようなものは共通しているかもしれません。
例えば、それは「ワクワクする」「ハッとする」といったような、新たな驚きのようなもので、まさにイノベーションという言葉で表すのが適切な体験の感覚ではないでしょうか。

イノベーションと呼ぶに値するような商品・サービスを創り出すには、三愛精神のような、「愛」という言葉に象徴される何らかの感情的なものが必要なのかもしれません。

そして、それは、人と人との関わりを通して受け継がれていき、さらに世界に広がっていくのでしょう。

では、「愛」があれば世界を変えられるのでしょうか?

人種差別の撤廃で有名なキング牧師はこう言っていました。

愛なき力は、無謀で乱用をきたすものであり、力なき愛は、感傷的で実行力が乏しいものだ。

キング牧師は、人は一般的に「愛」と「力」のどちらかに偏ってしまう傾向があることを見据えた上で、どちらかを否定するのではなく、その両方が必要だと考えていたのでしょう。

キング牧師の言葉が正しいことは、リコーグループの事業を多角化して成長させた市村氏が、身を以て示していると思います。

市村氏が新たな事業を始めることを決めたきっかけの多くは、経営が悪化した他の会社の経営者からの再建の依頼でした。

「三愛精神」に根ざした「愛」で、危機に陥った経営者や従業員を救いたいと願ったとしても、企業経営に関する正しい知識やスキル・行動姿勢やアイディアなどの「力」がなければ、事業を再建して新たな価値を世の中に提供する事はできません。

逆に「力」があったとしても、「愛」がなければ、安易なリストラに走ったり粉飾決算など不正を犯してでも、事業を延命できれば良いという方向に行ってしまいます。

また、市村学校で学んだ盛田氏はこのように言っていたそうです。

ソニーに関係のあるすべての人に幸福になってもらうことが私の念願であるが、とりわけ社員の幸福は、私の最大関心事である。なんといっても社員は、一度しかない人生の一番輝かしい時期をソニーに委ねる人たちであるから、絶対に幸福になってもらいたい。

この言葉からは、三愛精神の「人を愛し」にも通じる「愛」が感じられます。

しかし、盛田氏はこうも言っていたそうです。

会社とはあくまで儲けるための団体である。血みどろの戦いの場である。楽しみ自体に目的を持たれてはたまったものではない。楽しみを追っかける小市民的な夢に安住している人間を、私はビジネスマン失格者と見なす。安閑としていては、会社の成長についていくことは難しい。口うるさいほどに言いたいのは、会社とは欲と二人連れの儲けるための団体である。この儲けの精神を忘れた時、すべてのサラリーマンは失格者として進歩から見放されるであろう。

 この言葉からは、「力」を重視しているように感じられます。

ただし、これは高度経済成長期の頃に語られた言葉なので、今の感覚からすると少しきつ過ぎる感じはしますが(笑)

やはり、ビジネスにおいては、個人としてでも組織としてでも、世界をより良くするために何らかの新しい価値を創り出すためには、自らの「愛」と「力」の両方を成長させていくことが必要だということでしょう。

では、自らの内なる「愛と力」を育んでいくためにはどうすればいいのでしょうか?

私たちは、今、とても恵まれた世界に住んでいるように思います。
先に挙げたような、市村氏、盛田氏、ジョブス氏などの有名な故人のみならず、自分の身近にも多くの手本とすべき「師」がいるのではないでしょうか?

上の問いへのヒントは、下のリンク先から、市村清氏の肉声で直接聞いてみることをお勧めします。


市村清講演 「私の座右の銘」

「私は座右の銘というものは特に持っていないのであります。と申しますのは、何からでも学び取りたい。俗にいう3歳の子供からでも教えを受けると、こういう風に普段から考えているのであります。」

「天地自然、あるいはあらゆる人々から、良いところ、または新しいところをみんな学び取るようにしているわけであります。またそうでなければ、固定した考え方をしておりましては、良い感覚とか優れたアイディアとかは生まれてこないんじゃないかと、こういう風に思っているからであります。」

「私自身は、いかにして私自身を『無』にしておくかと、とらえられない自分にしておくかと、いうことが私の日常の心がけになっているのであります。」

このような市村氏の言葉に耳を傾けていると、「愛と力」という何となく崇高に感じる素養を高めるためのヒントも、心がけ次第でいくらでも身近な環境から学び取ることができると、思えてきます。

世界を変えるために、「愛と力」をどう育んでいくのか?

その問いには、絶対的な正解は無く、知識やスキルのレベルで答えても意味がないのかもしれません。
それは、時代によっても人の個性によっても、違ってくるでしょう。

しかし、学ぶ「姿勢」には、普遍的な原理があるように思います。
それが、市村氏のように「3歳の子どもからでも教えを受ける」という、「囚われのない心」なのです。