ソーシャル・キャリアコンサルタント 五十嵐郁一 Official Blog

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逆境が育む、人の心の痛みに対する「共感力」と、さりげない「優しさ」

f:id:YOU50:20190513080209j:plain※画像はイメージです

サラリーマンやОLの方にとって、勤めている会社がいわゆるブラック企業だったり、嫌な上司に当たったりするのは、とても辛いことだと思います。
私も、若い頃にそのような経験をしたので、辛い気持ちは良くわかる気がします。

もう30年位前ですが、初めて社員として入社した会社の最初の上司に、仕事後にしつこく酒飲みに連れまわされていた時期がありました。

その上司は、一般的な人より若くして昇格し、自称「出世頭」という方でした。
しかし、いわゆる「パワハラ」タイプで、周りの人からの評判も良くありませんでした。

その上司に、ほぼ連日のように飲みに誘われ、断ると脅したり嫌味を言うので、嫌々ながら付き合っていました。
就職したばかりで安月給の私にとっては、経済的にもきつい状況でした。

その上司は、フィリピンから日本に出稼ぎに来ている女性が接客する「フィリピン・パブ」がお気に入りでした。

ある夜、そのフィリピン・パブで、上司がタガログ語でカラオケを熱唱している時、私の隣の席でそれを聞いていたホステスさんが、片言の日本語でこう言ってきました。

「わたし、ことばはわからない。でも、ここ(胸に手をあてて)はわかる。あのひと(私の上司)、わるいひと。あなたはいいひと」

その後何を話したかなどは覚えていませんが、なぜかその言葉だけは、今でも覚えています。
当時、酒飲みの上司に当たってしまい、付き合いも断りきれない自分に対しても嫌気がさしていたので、「いいひと」と言われて、少し救われた気がしたのでしょう。

フィリピン人のホステスさんが、私のどこを見て「いいひと」と言ったのかはわかりません。
なぜ、そのホステスさんが私にそういったのかもわかりません。

もしかしたら、私の心の中を見抜いて、慰めようとしてくれたのかもしれません。
私に対する思いやりだったのかもしれません。

当時、故郷のフィリピンから日本に来て、夜の仕事をするのは決して楽なことではないでしょう。
良いお客さんばかりでは無いでしょうし、色々な苦労があったと思います。

きっと、そのような「逆境」におかれているからこそ、「人の心の痛み」もわかるようになり、私に慰めの言葉をかけてくれたのでしょう。

私自身も、他の人から「逆境」と言われるような経験をしてきました。
もしかしたら思い上がりかも知れませんが、多少は、「人の心の痛み」もわかるようになってきたような気がします。

今思えば、その上司も寂しさや心の痛みを抱えていたのかもしれません。
若かった当時は、嫌で嫌で仕方がありませんでしたが、今では、その上司に対しても、色々なことを教えて頂いたと感謝できるようになりました。

しかし、特に大組織の中で権限を持ったエリートっぽい人というのは、屈折した虚栄心のようなものを抱えていることも確かに多いように感じます。
(全ての方がそうだということではなく、素晴らしい方も多いことも確かです)

反対に、上に書いたフィリピン人のホステスさんのような、現場で汗をかいている人は、ささやかだけど温かみのある優しさを持っていることが多いように思います。

私は、若い頃、経済的に苦しく定職につかず日払いのアルバイトを転々としていた時期があります。

そんな私に、炎天下の工事現場で、休憩時間に缶ジュースをくれた方。
100円程度ではありますが、本当にお金に苦しんでいた自分には有難かったです。

トラックターミナルで、いつも社員食堂の食券を分けてくれた方。
500円程度のものかもしれませんが、やはり自分にとっては有難かった。

「あなたは、こんなところで働いていちゃいけない。早くしっかりとした仕事をしなさい。」
そんな風に諭してくれた方もいました。

その他、全ては書ききれませんが、そのような人々の優しさは、今でも忘れません。

こうして昔を振り返ってみると、人生の中で、キツイ仕事に当たったり嫌な人間関係で苦労したことは、やっぱり無駄ではなかったと思えます。

上に書いたような自分に優しくしてくれた人たちも、逆境の中で、本人も知らないうちに「人の心の痛みに対する共感力」を磨いていたのかもしれません。
それは、難しい言葉ではなく、「さりげない優しさ」として自然に現れてくるのでしょう。

「わたし、ことばはわからない。でも、ここ(胸に手をあてて)はわかる。」

30年位前に、そう言っていたホステスさんは、もちろん、今どうしているかはわかりません。

でも、きっと幸せに暮らしているのではないでしょうか。
生き抜いていく上で最も大切な、高い「人間力」を持っていた人ですから・・・。