長い歴史のスケールで見れば、本当に「つい最近」のことですが、空襲で東京は焼け野原になり、広島と長崎に原爆が落とされ、1945年に太平洋戦争が終わりました。
その後、日本は、荒廃した国土を復興させ、世界の歴史上まれにみる奇跡的な経済成長を遂げました。
いわゆる「高度経済成長期」と呼ばれる時期です。
そして、「高度経済成長期」は終わりましたが、依然として、世界第3位の「経済大国」であり続けています。
日本は、驚異的なスピードで、豊かな国への成長を遂げたはずです。
しかし、こんなニュースを目にして、愕然としました。
「10代前半の死因は自殺が1位 17年調査、戦後初めて」
今更言うまでもありませんが、太平洋戦争中は、例えば特攻隊として、多くの若者たちが、生きることを望みながらも戦争の犠牲となって死んでいきました。
それから70年以上かけて作ってきたのが、天寿を全うできない若者の死因が、戦争でも病気でもなく「自殺」が最も多い国家だとしたら、あまりにも悲しいことではないでしょうか。
15~34歳を対象にした国際比較では、他の主要先進国の死因の1位は「事故」となっていますが、日本だけは「自殺」がトップになっているそうです。
また、若者の自殺だけでなく、児童虐待の増加や子どもの貧困なども、社会問題となっています。
ノーベル平和賞を受賞したマザー・テレサは、以前、日本人に向けてこんなメッセージを送ってくれました。
この世界の最もひどい貧困は、食べ物の欠乏ではなく、愛の欠乏です。
あなた方のような豊かな国の場合、持っているものに決して満足しない人たち、我慢を知らない人たち、絶望に身をゆだねる人たち、このような人たちの貧困があります。
心の貧困は、しばしば最も回復しにくく、打ち勝つのがもっと難しいものです。
マザー・テレサの言葉通り、日本は物質的は豊かになりましたが、その心の深い底には「心の焼け野原」が広がっているのではないでしょうか?
高度経済成長期には、「経済戦争」や「企業戦士」という言葉が飛び交っていました。
「受験戦争」なんていう言葉もありました。
もしかしたら、その急激な経済成長をもたらした色々な戦いの痛みが、今になって様々な「心の社会問題」として顕在化してきたのかも知れません。
人間に強いストレスがかかる状態が長く続くと、元々持っている免疫力が低下し、特に弱い部分から病気が出るそうです。
今の日本を、個々の国民の総和ではなく、全体的な一つの「生命体」として診るとすれば、そのストレスが、一番弱い部分、つまり、子ども達の心の病となって現れてたと考えられるのではないでしょうか。
今は、少し立ち止まって、「心の焼け野原」を正視すべきなのかもしれません。
そして、これからは、マザー・テレサが日本に見た「心の貧困」を克服して、人としての高度な「精神性」を高めていく時代にすべきだと思います。
それは、いつか「心の豊かな国」となった未来の日本において、「高度精神成長期」という言葉で振り返られる時代になるかもしれません。
私たち日本人は、経済において、世界から「ジャパン・ミラクル」と言われた、人類の歴史上類を見ないほどの奇跡的なスピードでの復興を成し遂げました。
であれば、人類としての精神性の進化においても、同じように、世界のモデルとなるような「ジャパン・ミラクル」を成し遂げられるはずです。
もともと、日本は豊かで美しい精神に満ちていた国なのですから・・・。
では、「高度精神成長期」をスタートさせるためには、まず何から始めればよいのでしょうか?
私は、このマザー・テレサの言葉をヒントにしたいと考えています。
「まず自分の家庭を、安らぎと幸福と愛に包まれた場所にすることから始めましょう。
あなたの家族のひとりひとり、そしてあなたの周りにいる人たちへのあなたの愛を通して。」「愛はどうやって始まるのでしょう。愛はほほえむことだけで始まります。」
先に、「心の豊かな国」と言いましたが、その「豊かさ」とは、得られるものを増やすという意味ではありません。
むしろ、余計なものを「手放す」ことで得られる「ゆとり」のようなものを意味しています。
心にゆとりがあると、自然と「ほほえむ」時間が増えていくでしょう。
そして、日本の全て家庭やコミュニティの中に、今以上に多くのほほえみが満ちていけば、より「心の豊かな国」となり、若者の自殺や虐待、子どもの貧困など、様々な「心の貧困」がもたらす問題が解消されていくはずです。
今日は抽象的な話になってしまいましたが、新たに始まった令和時代を節目として、「高度精神成長」に貢献できる活動を、少しづつ進めていきたいと思います。
「心の焼け野原」が、桜の咲き誇る地になることを願って。