ソーシャル・キャリアコンサルタント 五十嵐郁一 Official Blog

社会起業家×キャリアコンサルタント=ソーシャル・キャリアコンサルタント → より幸せな社会の実現を目指して

「ソーシャル・キャリアコンサルタント」として生きる

ブログ名に、「ソーシャル・キャリアコンサルタント」という言葉がありますが、ごく普通の方々にとっては、そもそも「ソーシャル・キャリアコンサルタントって何?」という感じだと思います。
私が勝手に作った造語なので、初めて目にする言葉だと思います。

その言葉に込めた私の想いについては以前の記事にも書きましたが、改めて、直近の活動も含め、「ソーシャル・キャリアコンサルタント」の使命としてまとめておきます。

私は、過去の自分の生い立ちやキャリアを総括し、自らの「働き方のスタイル」を「ソーシャル・キャリアコンサルタント」と定めることにしました。

私が考える「働き方のスタイル」とは、生計を立てるための手段とか、所属している組織などの枠組みを超えた「個人としての在り方」のようなものです。

「ソーシャル・キャリアコンサルタント」の使命は、次の通りです。

「キャリアコンサルティングの知見・手法を活かし、人が秘めている潜在的な力の開花を起点に、より良き組織・社会への変革を目指し、社会的課題の解決に貢献する」

表現を変えると、このような掛け合わせになります。

社会起業家×キャリアコンサルタント=ソーシャル・キャリアコンサルタント

ここでいう「社会起業家」とは、NPO法人を立ち上げたり社会福祉の分野で働いたりする人という狭い意味ではありません。

私は、企業などの営利組織にいても、社会貢献の志を持ちながら目の前の仕事に取り組んだり、ボランティアとして活動したりするならば、誰でも「社会起業家」であると考えています。

そのような考えを持つようになったきっかけは、企業で勤務しながら通学した社会人大学院での学びです。
2015年に多摩大学大学院に入学し、経営情報学修士MBA)の学位を取得しました。

そこで学んだことで最も大きかったのは、前述した「社会起業家」としてのスタイルです。

私は、在学中に、田坂広志名誉教授から、社会起業家としての在り方について、真剣勝負の薫陶を受けることができました。
社会起業家フォーラム」を設立し、多くの社会起業家を育成してきた田坂教授は、「社会起業家のスタイル」について、こう言っています。

「社会貢献」や「社会変革」の志を持ち、「現在の事業の革新」や「新しい事業の創造」を通じて、「良き社会」を実現しようと考え、働くこと。

そのような「社会起業家」にとって大切なのは、自らの原体験を自覚することです。
それが社会的課題を解決するための動機となるからです。

私は、子どもの頃から父がアルコール依存症になり、暗く貧困な家庭で育ちました。色々と苦労もしましたが、今では、ささやかながら幸せに暮らせるようになりました。
大学院で学び、そのような自らの「原体験」と向き合う中で、過去の自分と同じような痛みを抱えた人々のために何かしたいという気持ちが、だんだん強くなってきました。

親が、アルコールや薬物、ギャンブルなどに依存したり、暴力を振るったりする家族のことを「機能不全家族」と言います。
最近では、児童虐待の報道も増えていますが、機能不全家族や貧困が世代を超えて連鎖する「負の連鎖」が日本の社会的課題となっています。
そのような背景から、今は、「ソーシャル・キャリアコンサルタント」として、そのような「負の連鎖」を断ち切る活動を進めています。

もう一方の、「キャリアコンサルタント」のスタイルについての考え方は、次の通りです。

まず、よく使われる言葉ではありますが、そもそも「キャリア」とは何でしょうか?

もちろん、人によって様々な考え方はあるのですが、キャリア発達理論において最も認知されているのは、心理学者ドナルド・E・スーパーが提唱した以下の定義です。

  • 人生を構成とする一連の出来事
  • 自己発達の全体の中で、労働への個人の関与として表現される職業と、人生のほかの役割との連鎖
  • 青年期から引退期にいたる、報酬無報酬の一連の地位
  • それには学生、雇用者、年金生活者などの役割や、副業、家族、市民の役割も含まれる

「キャリア」とは、決して職業や地位だけを指すのではなく、まさに、人生そのものという事でしょう。

一般的に「キャリアコンサルタント」というと、学生の進路選択や就職活動、社会人の転職などに関する支援をする人というイメージを持つ人が多いと思います。
また、自分自身の「市場価値」を高めること、すなわち「キャリアアップ」を目指し、他のビジネスパーソンとの競争に勝つことを働くことのゴールだと思っている人もいるようです。

しかし、これからの時代の「キャリア」とは、そのような狭い意味に囚われるのではなく、スーパーが定義しているように、幅広く本質的な意味付けをすべきだと考えています。

ミネソタ大学名誉教授L・サニー・ハンセンは、新たな時代のキャリアに対する考え方について、こう言っています。

環境問題や人権、多元的な文化、暴力など、各国が直面している問題は、キャリアプランニングにも新しい基本的な考え方を求めています。
今後は、自分の満足や生計のための個人的な職業選択だけに焦点を当てるのではなく、意味ある人生のため、つまり自分にも社会にも役立つ仕事をするために、一生に何度も選択をしていくということが重視されるようになるでしょう。

古来より日本においては、「働く」という言葉に、「傍(はた)を楽(らく)にする」、つまり「周りの人々を楽にする」という意味が込められていました。
アメリカの先端的なキャリア理論家であるハンセン教授も、全くそれと同じことを言っているのです。

私は、以上のような考え方を踏まえて、「キャリアコンサルタントのスタイル」を、以下のように広く捉えています。

はたらく人々が、より良き人生を生きるための支援を行うこと。

次に、「ソーシャル・キャリアコンサルタント」としての直近の活動の一例をご紹介します。

2018年から現在まで継続して、児童養護施設で暮らす子ども達へのキャリア教育を実施しています。

児童養護施設とは、虐待や貧困など、何らかの理由で実の親の元で暮らすことが困難になった子ども達を保護し、養育する施設です。
そこで暮らす子ども達は、原則として、18歳になると施設を退所し、自分で住むところを確保して、自立して生計を立てなければなりません。
しかし、頼れる家族も無く準備不足の状態で社会に出てしまい、孤独や貧困に苦しみドロップアウトしてしまうケースが多いことが課題となっています。

そのような悲しい現実を少しでも変えるために、茨城県つくば市児童養護施設で暮らす中高生を対象に、退所後の円滑な自立を目的としたキャリア教育プログラムを立ち上げました。
無償で、新たにプログラムを開発し、講師も務めています。

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児童養護施設の子ども達は、その生い立ちから、自己肯定感や自己効力感が低くなりやすい傾向があります。
また、経済的にも自立しなければならないため、施設にいる間に、しっかりとした現実的な「キャリア戦略」を立てておく必要があります。

2018年の9月からプログラムを開始しましたが、子ども達の振り返りを見ると、「今まで先のことを考えていなかったので不安になった」という声もありました。

実際に始めてみると、遊びたい盛りの中高生達に、将来の職業生活について現実的に考えてもらうことの難しさを実感しました。
「強いられた自立」に直面させられる子ども達の状況に対して、心に痛みも感じています。

今までも仕事でキャリア教育には関わっていましたが、それは企業の社員が対象でした。
家庭で負った心の傷を抱えた子ども達に接すると、そのギャップの大きさに悩むこともあります。
施設の職員の方と一緒に、走りながら手探りで進めているところです。

その他に、主に機能不全家族の元で育ち、生き辛さを抱えた若者を対象とした一般向けのイベントも開催しました。

安心して自分の心の傷と向き合うきっかけの場を創りたいという願いを込めて、「いやしのプチ心理学カフェ~その生きづらさは、あなたのせいじゃない」というタイトルで、気楽に対話できる場をつくりました。

そのイベントや私自身の生い立ちについて、社会人大学院を舞台とした「ザ・ノンフィクション」というドキュメンタリー番組の取材を受け、昨年の7月にフジテレビで放映されました。

また、尚美学園大学では、「社会を蝕む貧困の連鎖」というテーマで、約200名の学生の方を対象として、私の原体験を元に講義をさせて頂きました。

以上は活動の一例ですが、まだまだ小さいことしかできていないというのが実感です。それでも、田坂教授の次の言葉を思い起こしながら、地道に活動を続けています。

社会起業家にとって最も大切なことは、
「どれほど大きな事業の革新を行ったか」や
「どれほど大きな事業の創造を行ったか」ではありません。
最も大切なことは、現在の自分の置かれている環境や制約のなかで、たとえ小さな一歩でも良いから、事業の革新や創造に取り組むということです。
その革新や創造に取り組む事業は、決して、最初から「大きな事業」である必要はありません。
ときに、それは、我々が日々取り組んでいる仕事の「小さな革新」でも良いのです。

社会は「人」の集まりです。
その社会を構成する一人ひとりのかけがえの無い人生がより良きものになれば、より良き社会への変革も促されるでしょう。

つまり、「良き人生を生きるための方策」であるキャリアコンサルティングの専門的知見・手法を駆使して、「良き社会」を実現しようと考え、働くことが、「ソーシャル・キャリアコンサルタント」の働き方のスタイルなのです。