ソーシャル・キャリアコンサルタント 五十嵐郁一 Official Blog

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研修効果を説明しやすい企画の考え方のシンプルなポイント

「過去10年間のあらゆる調査を通じて、自社のラーニング部門の業績に満足しているビジネスリーダーの割合は、20%前後にとどまったままなのだ。」

 これは、2013年にアメリカで出版された本の邦訳「企業内学習入門」に書かれている言葉ですが、日本企業の人材開発部門でも一般的に同じような傾向があるようです

人材開発部門の方は、費用をかけて研修を実施した効果について、経営陣から説明を求められても答えにくいと感じることが多いようです。

集合研修等の人材開発プログラムを企画する際には、事後の効果を説明できるようにするためのポイントがあります。

確かに、そこを外してしまうと、後で研修の効果を関係者の方に説明しにくい状況になる可能性があります。
では、そのポイントはどのようなものなのか? 事後の効果が説明しやすいように、人材開発プログラムを企画するための考え方を、以下のシンプルな図にまとめてみました。

  

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このイメージを持って企画を進めれば良いのですが、一言で言えば、以下のようになります。
 
「事前に、現実的に達成が可能な得たい効果を具体的な目標として記述し、その測定方法を決めておく」
 
上のイメージ図にはADDIEモデルがあり、今更説明するまでもないと思いますが念のため、以下にも書いておきます。
 
・分析(Analysis)
・設計(Design)
・開発(Development)
・実施(Implementation)
・評価(Evaluation)
  
当たり前の事ですが、「設計(Design)」の段階で、どのような効果を得たいのか(objective)、どのように測定するのか(method )を決めておけば、後はその通りに「評価(Evaluation)」すれば良いのです。
人材開発部門で「設計(Design)」がしっかりできていれば、「開発(Development)」を外部の専門会社に依頼する場合も、既存のパッケージ研修を外部から購入する場合にも、得たい効果により適合した提案が受けられる可能性が高まります。
 
上の図の、ADDIEモデルの横にあるのは、とても有名な「カークパトリック・モデル」です。
 
もし、「カークパトリック・モデル」を活用するのであれば、やはりどのレベルまで測定するかを事前に決めておけば良いと思います。
レベル別の測定方法の例についても、シンプルにまとめてみたので、以下の図を参照してください。
 

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これも当たり前ですが、レベルが上がるに従って、研修そのものだけでなく効果測定を実施するためのコストや時間が増大します。

例えば、行動変容まで測定する場合は、研修の参加者だけでなくその上司の方にも協力をお願いしなければならないこともあります。
 
どのレベルまでの効果を求めるのか、その目的をしっかり考え予算や納期とのバランスも、やはり事前に考えておく必要があります。
(QCD of evaluation)
 
日本の人材開発部門を対象に行われたある調査によると、「ID(インストラクショナルデザイン)技術を用い教育ゴールを設定している」と回答した割合は、わずか6%だったそうです。
(出典:「はじめての教育効果測定」堤宇一編著/日科技連出版社」)
 
まだ、得たい効果としての「教育ゴール」の設定が抽象的なレベルになっているケースも多いのが、教育の効果測定を難しく感じさせることにつながっているのかも知れません。
そもそも、どこに行きたいのか明確になっていなければ、どこまで到達したかを測る事もできないでしょう。
 
教育の効果測定がしやすい企画のプロセスはとってもシンプルですが、まず「設計(Design)」にじっくり時間をかけて真剣に考え抜く事は、当たり前すぎますが重要なポイントなのです。
以前の記事でも紹介した「はじめての教育効果測定」という本には、このようなことが書かれています。

「人材育成部門が果たす機能は本来、その重要なナレッジを創出し、移転させることにある。その意味からも人材育成部門は組織内の各方面より信頼され、その重要性を認識されることが大きな鍵となる。そのためにも経営幹部層、ライン管理職層との関係が濃密で、お互いが相互補完の関係にあることが望ましいと考えるのは自然である。」

社内の関係者との信頼に基づいて、企業全体での人材育成を相互補完で進めるためにも、説明責任が果たしやすい企画が重要だと言えるでしょう。