日本の企業で、いわゆる「間接部門」「スタッフ部門」と呼ばれる部署で働いている人々の内、こんな事を誰かに言ってもらったことのある人はどのくらいるでしょうか?
「人事の仕事はカッコいい。経理の仕事はしびれる。情報システムの仕事は鳥肌が立つ。少なくともスタジアムや劇場で起こることに負けないくらい、カッコいいし、しびれるし、鳥肌が立つ」
トム・ピーターズは、名著「エクセレント・カンパニー」を始め、数多く著書があります。
その中で、主に「間接部門」で働く人々を対象に、プロフェッショナルとして活躍するための考え方や方法について書いているのが、「知能販のプロになれ!」という本です。
上に書いた言葉も同書からの引用ですが、トム・ピーターズは、この本についてこう書いています。
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カッコいい。おしゃれ。グッとくる。そそられる。たまんない。そういう言葉を聞いて、経理部や人事部を連想する人はまずいない。
どうしてなのか?
私の答え。そういう思い込みがあり、想像力が欠如しているからだ。
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では、「そういう事態」を変えるにはどうしたら良いのでしょうか?
トム・ピーターズが提案するのは、「会社員」としてではなく、社内においても、「知能販売会社」を経営しているというような意識を持って仕事に打ち込む事です。
「知能販のプロになれ!」というのは名訳だと思いますが、原書のタイトルはこうなっています。
The Professional Service Firm50 (Reinventing Work):
Fifty Ways to Transform Your "Department" into a Professional Service Firm Whose Trademarks are Passion and Innovation!
つまり、「知能販」とは、経営陣や現場の社員を「お客さん」とする、情熱とイノベーションを看板に掲げた自立したプロフェッショナルとでも言うべき存在なのです。
人事や経理などの間接部門で働く人々が、まず意識から改革して、自分の持っている「専門性」を「商品・売りモノ」として捉えるようにすれば、さらに業績にも貢献できて社内での信頼も高まっていく事でしょう。
トム・ピーターズは、こう書いています。
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めざましい変化というのはすべて、心の持ちようが出発点になる。
「与えられた仕事を無難にこなす」という姿勢から、「すごいプロジェクトをやって、お客さんを驚喜させてやる」という姿勢に変えるのだ。
そうすると、あなたの部はたちまちにして独立した企業体に変わる。
いまはたまたま、親会社と業務提携しているだけなのだ。
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先に引用したように、トム・ピーターズは私のような間接部門で働く人々にエールを贈ってくれています。
しかし、以下の言葉のように、より意識を高めることを私たちに求めてもいます。
やはり自分たちが所属する会社の中で、何をすべきか、何のために存在しているかという本質的な事は、自ら考えなければならないということです。
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あなたは、自分の職場を世界一の人事部にしたいと思わないか。(すべてについてとは言わないまでも、これだけはどこの会社の人事部にも負けないというものをもちたいと思わないか)。
思わないとすれば、どうして思わないのか。
たとえ会社の中の一部門であっても、自分たちは独立した企業体なのだという気概と誇りを、私はみなさんにもってほしい。
その気概と誇りをもつためには、明確なビジョンが必要になる。自分たちは何を大切にしているのか、何のために戦うのか、何を実現するために頑張るのかーそれをはっきりさせる必要がある。気高い仕事、人びとに夢と希望を与える仕事をやる必要がある(ついリキんでしまう私を許してほしい。私は斜に構えた連中が大嫌いだ。私はみなさんにすばらしい仕事をして、すばらしい人生を送ってもらいたいと思う。私はいつだって闘う用意ができている。みなさんは?)
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つい長い引用になってしまいましたが・・・(笑)
翻訳者の仁科和夫氏が、トム・ピーターズ特有のノリの良い語り口をとても巧く訳していて、熱い想いが良く伝わってきます。
では、その熱い想いに煽られて何か行動を起こしたくなったらどうすればいいのでしょうか?
本書には、そのための「Fifty Ways」が書いてあります。
トム・ピーターズも「すべてをやることは現実的に無理である」と言っていますが、まずは彼の言葉に触れるだけでも、日々の仕事に対するエネルギーをもらえると思います。