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なぜ、世界最大の人材開発のコミュニティが名称を変更したのか?

ASTDは、米国に本拠をおく、1943年に設立された人材開発に関する会員制組織ですが、約70年を経た現在、6大陸127か国で41,000人を超える会員を擁するようになりました。
(私もその一員です)

そのASTDが、今年の5月に名称変更を発表しました。

「ASTD」(American Society for Training & Development)から、「ATD」(Association for Talent Development)へと名称を変更したのですが、それは何故なのでしょうか?

その理由が、日本の企業や非営利組織で人材開発に関わる人々が、これから進むべき道筋を象徴的に示しているように思います。

以下、ASTDのサイトから引用します。

「ASTDが1943年に設立されて以来、この専門職は劇的な変化を遂げてきました。 Training & Developmentの専門家が果たす役割は、かつてなく広がりを見せ、深みを増しています。それらの専門家たちは、より広範な責任を担い、サービスを提供する個人や組織に対してより大きな影響力を与え、なくてはならないビジネスパートナーとなっています。」

「この業種の目的は70年間変わっていません。それは人材を育成することです。 つまり人々の知識、スキル、能力を育てていくことです。 この専門的職業は単なるトレーニングの範疇を超えていること、そして会員とお客様が与えている影響力もトレーニングを超えていることを示すために、ASTDという名称を変更することにしました。」

まず、上の文章の中で、「この専門職」という言葉が使われています。

日本企業においては、まだ人材開発部門の仕事に対する「専門職」としての認知度は低いという印象をもつ人が多いようです。 しかし、グローバル企業では、人材開発はプロフェッショナルの仕事として認知されています。

日本企業においても、実際には、人材開発・教育に携わる方々は、インストラクショナルデザインや行動科学等の知見を備え、それを活かして仕事を進めていると思います。

これからは、自分自身の「人々の知識、スキル、能力を育てていく」ための専門性にもっと自信を持って、「専門職」としてのアイデンティティを確立し、社内外においてプロフェッショナルとしての存在感を高めていく努力を続けるべきではないでしょうか?

また、「この専門的職業は単なるトレーニングの範疇を超えている」とも書かれています。

「トレーニング」というと、直訳すれば「訓練・教育」という言葉になりますが、知識やスキルを教える側から教えられる側へ一方的に伝授するような「研修」のイメージがあると思います。

もちろん、「トレーニング」の重要性は今後も変わらないでしょう。
しかし、これからは、人材開発に携わる人々の仕事として、そのような「研修」だけではなく、人や組織の潜在的な可能性を引き出すような領域へと広げることを、世界中の組織や個人から求められているのです。

そのような期待に応えられるような人材開発のプロフェッショナルのコミュニティへと成長し続けるために、ASTDは、「Training & Development」から、「Talent Development」へと変化したという訳です。

そして、その変化は、これからの日本の人材開発のあるべき姿と全く同じだと思います。

では、人材開発に携わる私たちの仕事の意義とはどのようなものなのでしょうか?
ASTDは、私たちにこのようなメッセージを送っています。

「皆さんには言うまでもないことですが、皆さんの仕事はトレーニングだけにはとどまらない広範なものです。 人が持つ才能と能力を見つけ、それを最大限まで発揮できるように育てているのです。 その結果として、組織は繁栄し、この世界がより良く回るようになるのです。 それはどのように仕事を行うかに関する心構えや小手先のアプローチを超えるものです。 これこそまさに、この専門分野の核心部分なのです。」

「6大陸127か国で、皆さんが労働力の能力を構築しているのは、各個人が知識、スキル、能力を開発し、組織が成長し、社会が繁栄するためです。 皆さんの情熱、コミットメント、そして人が自分の潜在能力を認識できるように支援する力によって、この世界を共により良いものとしていけますように。」

要約すれば、人材開発の仕事の意義とは、「人と組織が成長するための知見を活かして、この世界をより良い方向に変えていく」ということでしょう。

もっと、端的に一言で言うならば、人材開発に携わる者の使命とは、「世界を変える」ことなのかも知れません。