ソーシャル・キャリアコンサルタント 五十嵐郁一 Official Blog

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人と組織の問題を劇的に解決するU理論入門


「愛(Love)なき力(Power)は、無謀で乱用をきたすものであり、力なき愛は、感傷的で無力だ」


これは、有名なマーチン・ルーサー・キングJr.牧師の言葉です。
企業などの組織の中で、例え少しでも何らかの理想に向けて変革を起こしたいという思いを持った人であれば、この言葉の持つ深い意味合いに共感するのではないでしょうか。


「愛」と「力」は両方が必要でありながら、どちらかというと相反するものとして捉えられがちで、どちらかに偏ってしまうのが現実であると思ってしまう人も多いのではないかと思います。


しかし、「愛と力」を統合して、大きな変革を成し遂げる事が決して不可能ではない事は、キング牧師をはじめ多くの人々がその行動をもって証明してくれています。


では、キング牧師のような人は特別で、ごく普通の人に変革は起こせないのでしょうか?


その答えは、「できる」です。


そして、その「愛と力」を統合して変革を成し遂げるための原則を、分かりやすく教えてくれる本が、「人と組織の問題を劇的に解決するU理論入門 (中土井僚著)」です。


U理論とは、このブログでも以前紹介しましたが、MITのオットー・シャーマー博士が提唱した理論です。


今まで、日本においてU理論について書かれた本は、オットー・シャーマー博士の著書「U理論」など少数の翻訳本のみで、どちらかというと学術的で一般の人にとっては難解なものばかりでした。


しかし、今年の一月に、オットーシャーマー博士の「U理論」の翻訳者である中土井氏が、自ら筆を執り、ごく一般的な日本のビジネスパーソンにも分かりやすい入門書として「U理論入門」を出版しました。


同書は、日本人にとって身近に感じられる事例を多用しながら、U理論を噛み砕いて説明しています。


U理論は、様々な分野の革新的な約130名のリーダーに対するインタビューから得られた知見がベースになっています。


そういう観点からは高邁な理論とも言えますが、本書では、「ラーメン屋のオヤジ」や「鳶職の父を嫌っていた少年」の例などを引き合いに出しながらも、学術的な用語ともしっかり結びつけて、誰にでも本質的な理解を促すように書いています。


企業における変革の事例や、個人、チーム、組織・コミュニティのそれぞれの単位に見合った、U理論を実践するためのヒントについても書かれています。


本書は、かなり実践に役立つものになっていますが、万能の手法であると勘違いされないように、その難しさについても、このようにしっかり書かれています。


「U理論は、変革を実現するための手法やテクニックというより、むしろ変革の原理というべきものなので、どんな方向に舵を切れば変革が生まれやすくなるのか、そのガイドラインとして活用していただくのがよいと思います」

「手法やテクニックでない分、これさえやればUプロセスが計画通りに進められるという類いのものではなく、トライしてみては原理と照らし合わせて、即興的にデザインを変えていくことが求められます」

(P104)


先に、ごく普通の人でもキング牧師のように変革ができると書きましたが、決して「手軽に」できる訳ではありません。


時々、「これさえやれば、必ず組織も人も変わります」というような、あたかも魔法の杖の様な手法を提案する人に出会う事もあります。


しかし、U理論は、そのような「魔法の杖」などない事を明示するものでもあります。


中土井氏はこう書いています。


「最も特徴的なのは、優れたリーダーの『やり方』に着目するのではなく、ブラックボックスになっている彼らの『内面のあり方』、すなわち高度なパフォーマンスや変革が起る際の『意識の変容』に注目している点です」
(P2)


やはり、「意識の変容」というのは難しく、変革の実践については、自らの実情に即して考えなければならないので、様々な葛藤を抱える事にはなると思います。


しかし、本書を読めば、少なくとも原則とその実践のためのガイドラインは得られるでしょう。


本書の最後で、中土井氏はこう言い切っています。


「U理論は人類の希望です」


本書を読めば、この言葉が決して大げさなものではない事がわかると思います。


個人や企業、社会・コミュニティが、それぞれ抱えている矛盾を統合し、持続的な発展を遂げるためには、より多くの人々の「意識の変容」が必要になります。


本書は、難解とされていたU理論を、多くの人にとって身近で実践的なものに変える事で、その流れを加速させる意義を持っていると思います。