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企業の組織開発担当者は何を成すべきか?どう行動すべきか?


「『組織活性化』という言葉は、わかったような、わからないようなマジックワードであり、ともすれば、人を思考停止に陥らせてしまうのです」


これは、「大人の学びを科学する」をテーマに研究している、東京大学大学院の中原淳准教授が語った言葉です。


※出典:日本の人事部第6回HRカンファレンス基調講演
http://hr-conference.jp/report/r06/basic.html


確かに、「組織活性化」とは企業の中でよく使われる言葉ですが、具体的な「活性化」された状態を示すゴールイメージや、それに至るシナリオが伴っていない場合もあるようです。


また、組織活性化のために、「組織開発」という手法に対する関心も高まっています。


しかし、冒頭の中原准教授の言葉のように「組織活性化」をマジックワードして使い、「組織開発」の手法に短期的処方箋として取り組んでしまうと、根本的な問題は解決されない可能性が高くなるでしょう。


組織開発というと、「ワールドカフェ」「フィッシュボウル」などのワークショップの手法やファシリテーターが注目されやすいですが、それだけに偏ってしまうと、有効な手法も「短期的処方箋」になってしまうかも知れません。


では、「組織開発」をどのように捉えればよいのでしょうか?


組織開発の専門組織である、「組織開発ネットワーク(Organization Development Network)」では、以下のように定義をしています。


「組織開発は、組織とコミュニティーにおいて、システム的な変化を生み出すための、バリュー(価値)に基づいたアプローチです。組織開発は、組織やコミュニティー、そして周囲の世界に恩恵を与えるような、これまでにない望ましい状態を実現し、維持できる能力を築くことを目指しています」


このようなことを企業の中で実現するための実践的なガイドブックが、先の記事でも紹介したASTD Training Basicsシリーズの一冊である、「組織開発の基本~組織を変革するための基本的理論と実践法の体系的ガイド」です。


もちろん、日本でも既に組織開発に関する本は良いものが多く出ています。
しかし、概してワークショップのファシリテーションか、学術的理論のどちらかに偏るものが多く、企業の中で組織開発をミッションとする実務家の実践的なテキストとなるものは少なかったように思います。


「組織開発の基本」では、組織開発について、ファシリテーションも含め、行動科学の理論モデルから社内の関係者との関わり方まで、バランスよく体系的にまとめられています。


例えば、組織開発の中心となる人はどのような役割を果たせば良いのでしょうか?


本書では、そのような人を「組織開発プラクティショナー」として、以下のように担うべき役割を明確にしています。


「組織開発のプラクティショナーは、企業が成功に向けて、変革を成し遂げることや、人材、プロセス、プラクティス(実践)をアライメントさせることを支援します。また、人事、オペレーション、営業といった特定のファンクション(部門、部門の機能)の範囲を超えて、組織の中が実際にどのように動いているかを観察することによって支援します」(P15)


やはり、企業において組織開発を成功させるには、内部での要となる「組織開発プラクティショナー」がいなければならないということです。
組織開発のプロセスの一部を外部のファシリテーターに任せることがあっても良いですのですが、組織をシステムとして捉え全体を俯瞰しながら求心力となる人の存在が不可欠ということでしょう。


本書は、入門書としての位置付けになりますが、「組織開発プラクティショナー」が何ををなすべきか、どうすべきかについて、必要なことが具体的に網羅されているので、実践の良き指針になると思います。