日本においては、企業の人材開発部門は、一般的に研修の実施を担うイメージを持たれる場合が多いようです。
しかし、人材開発部門とは、本来はもっと大きな可能性を持っているチームです。
その可能性とは、専門的な知見を駆使し、人と組織のパフォーマンスを向上させる変革のエージェントとして、企業が顧客価値を創造する力を高めることです。
では、その可能性を実現するためには、どうすればよいのでしょうか?
有効な技法の一つが、HPI(Human Performance Improvement)です。
HPIは、人材・組織開発に関する世界最大の会員制組織であるASTDでも推奨されていて、人材開発のグローバルスタンダードと呼んでもいいものです。
最近では、現代自動車やサムスンなどの韓国企業も積極的に取り入れています。
しかしながら、日本企業ではまだHPIの認知度は比較的低いようです。
そのHPIについて基本的な知識を得られる本が、「HPIの基本~業績向上に貢献する人材開発のためのヒューマン・パフォーマンス・インプルーブメント」です。
記事の冒頭の画像がAmazon.co.jpにリンクしているので参照してください。
ASTDでは「HPI」と言っていますが、「パフォーマンスコンサルティング」と呼ばれる場合もあります。
また、以前の記事で紹介した「インストラクショナルデザインの原理」の中では、「HPT(Human Performance Technology)という用語で言及されています。
様々な用語が使われ、それぞれ若干の違いはありますが、本質は同じものと考えて差し支えありません。
その本質は以下のように定義付けられます。
「HPI(あるいはパフォーマンスコンサルティング)とは、人が関わって発生するパフォーマンスギャップを明確にし、解決することで組織の目標を達成させるシスティマティックで、体系的なアプローチです」
(「HPIの基本」P30)
もう少し具体的には、「HPIの基本」の翻訳者で、ASTDグローバルネットワークジャパン会長の中原孝子氏が、自社のサイトでわかりやすく説明しています。
以下のURLを参照してください。
・株式会社インストラクショナル デザイン
http://www.instructionaldesign.jp/HPI.html
例えば、時々「研修の効果がよくわからない」という声が聞かれる場合がありますが、HPIのコンセプトに沿って考えれば、そのようなことがなくなります。
「研修の効果がよくわからない」のは、本来は「研修」のみでは得られない効果を、「研修」に期待してしまっている場合があるからです。
HPIでは、経営課題の分析から入り、その解決のために、「研修」で解決できることと、できないことを切り分けて、それぞれを複合的に実施していきます。
その複合的なアプローチの例については、トランスフォーメーション・ラボ代表の加島一男氏が、自社のサイトで事例を紹介しています。
以下のURLを参照してください。
・営業プロセス改善のチェンジマネジメントを実施し業績を向上する(事例)
http://www.transformation-lab.com/2013/04/blog-post_7.html
また、ASTDのカンファレンスでは、海外の様々な企業がHPIに関する発表を行っています。
その一例を、「パフォーマンス・コンサルティング」の翻訳者で株式会社ヒューマンパフォーマンス代表の鹿野尚登氏が、自社のサイトで紹介しています。
以下のURLを参照してください。
・ASTD 2009報告-① パフォーマンス・コンサルティング事例
http://www.human-performance.co.jp/article/13494877.html
・ASTD 2009報告-② T.ギルバートの行動エンジニアリングモデルの進化・発展
http://www.human-performance.co.jp/article/13502186.html
・ASTD 2009報告-③ パフォーマンス・コンサルティングとタレントマネジメント
http://www.human-performance.co.jp/article/13512321.html
・ASTD 2010報告-① パフォーマンス・コンサルティングの浸透
http://www.human-performance.co.jp/article/13980561.html
・ASTD 2011報告-① 現代自動車のパフォーマンス・コンサルティング
http://www.human-performance.co.jp/article/14021003.html
・ASTD 2011報告-② アルコアの戦略人事(SBP)事例
http://www.human-performance.co.jp/article/14071081.html
上記のような事例を見ると、人材開発部門がより戦略的な幅広い役割を担うことが、グローバルな潮流であることがよくわかります。
その潮流に乗るために、HPIを学ぶことが役に立つと思います。
記事の冒頭で紹介した「HPIの基本」は、HPIの全体像が分かりやすく体系的に説明されているので、興味を持ってこれから学んでみたいと思った方には、ご一読をお勧めします。