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学習する組織としてのトヨタはどのように人を育てるのか?

  

 

8月2日に出揃った、主要な日本の自動車メーカーの決算を見ると、円安の追い風もあり大幅に業績が向上しています。

 

中でも、トヨタの本格的な復活が、マスコミの報道を見ても顕著に見受けられます。

 

トヨタ、6年ぶり利益2兆円台乗せ 14年3月期連結税引き前
http://www.nikkei.com/markets/kigyo/gyoseki.aspx?g=DGXNASGD0207T_02082013MM8000

 

トヨタは、2013年度の生産台数についても、世界の自動車メーカーの中で初めて、1000万台を超える見通しを立てています。

また、2012年の自動車の世界シェアでも、GMを抜いて1位に返り咲いています。

株式の時価総額でも日本企業ではダントツの1位でしたが、最近ではサムスン電子を超えて、アジア一の製造メーカーに返り咲きました。

 

やはり、トヨタが、リーマンショックなどの危機を乗り越え、競争優位性を高め続けてきた結果が、業績に現れているのでしょう。

 

なぜ、トヨタは、一時的な危機に瀕しても復活して競争優位を保ち続けられるのでしょうか?

 

長年トヨタを研究し続けている、ミシガン大学のジェフリー・K・ライカー教授は、こう言っています。

 

「世界的な企業や有名大学を含めて私が訪れたことがある組織の中で、トヨタが最も優れた学習する組織である。トヨタが標準化とイノベーションをコインの両面であると考え、両者をうまく融合させて素晴らしい継続性を生み出しているからだ」

 

一見、両極端に思えるような、標準化とイノベーションを統合する仕組みが、「トヨタ生産方式(TPS)」です。

 

トヨタは、愚直にTPSというシステムをブレずに貫き通しているからこそ、環境が変化しても競争優位性を保ち続けることができるのです。

 

では、TPSだけをずっと貫きながら、なぜ変化に対応できるのか?

 

それは、ライカー教授が指摘しているように、TPSそのものが、社員が自律的に学びながら成長し続ける「学習する組織」を作り上げているからです。

 

トヨタでは、社員に対する人材開発もTPSというシステムに埋め込まれたものになっています。

 

どのように人材開発がシステムに埋め込まれているかは、前出のライカー教授の著書「トヨタ経営大全 1 人材開発」に詳しく書かれています。

 

基本的には以下のようなサイクルになっています。

 

1.継続し、常に改善し続ける

2.高い要求のシステムを作る

3.高い能力を必要とする

4.高い能力のある人を育てる

(1に戻る)

 

つまり、社員全員が教育により常に高い能力を維持しなければならないように強制する仕組みが、TPSなのです。

 

トヨタの「カイゼン」に対する徹底的なこだわりは有名です。
トヨタほど、「カイゼン」や「ムダの排除」が組織文化の中に浸透していない企業では、社員教育の質が低くても、それほど問題になりません。

 

しかし、トヨタでは、社員の能力が高くなければTPSが維持できないため、必然的に教育の質も高くなければならないのです。

 

では、トヨタの現場ではどのような教育が行われているのでしょうか?

 

その教育のコンセプトは、全く特殊なものではなくいたってシンプルです。
そして、古くからある考え方を、やはり一貫してブレずに続けています。

 

トヨタの教育訓練や人材開発に関する基本的な考え方は、『トレーニング・ウィズ・インダストリー(TWL.Training Within Industry)』と呼ばれる、アメリカで1950年代に開発され、終戦直後に日本に積極的に導入されたプログラムが元になっています。

 

それを、TPSの生みの親である大野耐一氏が、トヨタに合うようにアレンジしたものを基本として今日に至っています。

 

その中の、仕事の教え方のステップも、基本は以下のようにとてもシンプルなものです。

 

1.習う準備をさせる
2.作業を説明する
3.やらせてみる
4.フォローアップする(教えたあとをみる)

 

本当に当たり前すぎるシンプルなステップで、有名な「やってみせ、言って聞かせて、させてみせ、ほめてやらねば、人は動かじ」という、山本五十六の言葉通りのものです。

 

もちろん、そのシンプルなステップを着実に実行するための、色々なツールや工夫もありますが、やはり重要なのは「徹底し続ける」ということでしょう。

 

そのため、トヨタのリーダーは、トレーニングの手法についても訓練を受け、メンバーの能力向上に大きな責任を負っています。

 

そして、教育は、人材開発部門の研修に参加させるものではなく、現場の実践を通して成すものという組織文化になっています。

 

つまり、「管理者=先生」ということなのですが、アメリカのマネジャーには受け入れ難い考え方です。

 

しかし、トヨタは工夫しながら「管理者=先生」という考え方もグローバルに展開しています。

 

上記のように、トヨタの人材開発のコンセプトは非常にシンプルなものですが、TPSというシステムの中に埋め込まれ、一貫性を持って徹底され続けているところに強みがあると言えるでしょう。

 

本書の中には、こう書かれています。

 

「『世の中に全く新しいことなどない』という言葉があるが、それは効果的な訓練方法に関しては真実のようだ」