ソーシャル・キャリアコンサルタント 五十嵐郁一 Official Blog

社会起業家×キャリアコンサルタント=ソーシャル・キャリアコンサルタント → より幸せな社会の実現を目指して

これから研修の内製化を進めるために知っておくべきこと

日本企業においては、研修を「外注」して、社外の研修専門サービス会社に任せるケースが多く見受けられましたが、最近では、外注していた研修を社内で開発して、講師も社員が務められるようにしたいと考える企業が増えてきています。

 

いわゆる「研修の内製化」に対する人事担当者の関心が高まっているようです。

 

しかし、グローバル経営が進んでいる優良企業においては、「研修」という手法を含めた、人材開発プログラムを社内で開発するのは、ごく当たり前のことになっていました。
アメリカには、日本で言う「研修の内製化」に相当する言葉はなく、英語にするのは難しいそうです。

 

例えば、世界的なエネルギー企業のBPでは、「ファースト・レベル・リーダー」という日本では「係長」に相当するレベルの階層の育成プログラムでさえも、社内の人事担当者と人材開発の専門家が開発し、250人以上のシニアマネジャーが講師となって、研修を実施しています。

 

なぜ、外注せずに、独自のプログラムを開発して、わざわざ忙しいシニアマネジャーが講師もやるのでしょうか?

 

それは、グローバルな環境で働く社員の多様性や、BPの企業風土を反映させたものでなければならず、万人向けのプログラムは通用しないからです。
そして、BPが「リーダーがリーダーを育てることの価値」を良く理解していたからです。

 

やはり、人材育成プログラムを外注せずに社内で企画し実行する能力は、企業の競合優位性を高める上では、当たり前というよりも、無くてはならないものであるといえるでしょう。

 

それは、企業の人材開発のレベルの高さそのものが、他社に対する競争優位性の源泉だからです。

 

「企業は人なり」という言葉を良く聞きますが、その「人」をいかに有能に育てるかで他社との差がつくことは、容易に理解できるでしょう。

 

「研修の内製化」を、外注コストの削減のために考える人事担当者の方もいらっしゃいます。
しかし、「研修の内製化」は、「コスト削減」よりも「人的な競争優位性の強化」を目的にしなければ、良い結果にはつながらないと思います。

 

では、これから「内製化」を進めようとした場合、どのようにすれば良いのでしょうか?

 

今まで外注していた研修を、これから自分でやってみようとする方に向けて、参考になる情報をご紹介します。

 

まず、内製化のポイントについて、東京大学准教授の中原淳先生が、ラーニングイベント「多様な社員を講師に育てる」で使用されたまとめのスライドを引用させて頂きます。


 

次に、わかりやすく基本から学べる本を3冊ご紹介します。

 

◆企業内人材育成入門

 

以前、このブログで紹介した「インストラクショナルデザインの原理」には、こう書かれています。

 

学習を効率よく成立させるためにインストラクションをデザインしようとしたときには、インストラクターが何かをなしえるような事象に関する学習理論の要素を探し出す必要がある

 

やはり、研修を自分で作るには、学習に関する理論の裏付けが必要になります。
本書では、心理学・経営学・教育学など幅広い分野から、特に企業人の学習における基本的で重要な理論を、分かりやすく解説しています。

いわば「学習理論のカタログ」のような本です。

 

研修などを作る際には、個人的な思い込みが入ってしまう危険もありますが、それを戒めてくれる本でもあります。

 

編者の中原淳先生が本の中で書かれている言葉を引用しておきます。

 

教育を提供する主体は、「企業」であって「私」ではない。そうであるならば、諸理論の知見をエビデンスとした処方箋が選択され、組織の意思決定として承認され、ノウハウをもった人々によって、集団に対して適用されるべきである

 

◆教育研修ファシリテーター

 

本書では、理論ではなく、研修プログラムを作るための実践的な知識を得る事が出来ます。

 

コンセプト作りから事後のフォローまでの研修に関する全てのプロセスについて、それぞれかなり具体的なノウハウが書かれているので、すぐに実務に行かすことが出来ます。

 

例えば、「レクチャー(講義)」と「ワークショップ(恊働)」と「リフレクション(省察)」の3つのスタイルを組み合わせて、相乗効果をどう生み出していくかなど、研修の受講者と講師が一体となる場のつくり方が良く理解できると思います。

 

◆社内インストラクター入門

 

研修を内製化した場合、社員が講師・インストラクターを努めることになりますが、そのために必要な基礎知識をバランスよくえることが出来る本です。

 

社員が講師となる場合には、研修の内容を教える役割だけでなく、その会社を代表するロールモデルとしての役割も担うことになります。

本書は、その会社の代表としての役割を担うことを前提として書かれているので、講師としての教え方の手法だけでなく、受講者との関わり方においても実践的な知見が得られます。

 

以上の本で学んだ基本を活かして実戦に臨み、失敗から知恵を学び、さらに専門知識の強化を継続していけば、「内製化」を着実に進められると思います。