ソーシャル・キャリアコンサルタント 五十嵐郁一 Official Blog

社会起業家×キャリアコンサルタント=ソーシャル・キャリアコンサルタント → より幸せな社会の実現を目指して

人材開発のプロフェッショナルのバイブル〜「インストラクショナルデザインの原理」

 

今回の記事のタイトルに掲げたバイブルとは、「インストラクショナルデザインの原理」という本です。

 

ASTDという世界規模で人材開発を支援する団体では、人材育成のプロフェッショナルに求められる能力を、9つの分野で定めています。
そして、その能力を認定するCPLPという資格制度も推進しています。

 

以前、「初めて人事関連部門で社員教育の担当になった方に贈る3冊の本」という記事でも紹介しましたが、CPLPの9つの認定項目は以下の通りです。

 

1.ラーニングのデザイン
2.ヒューマンパフォマンスの改善・向上
3.研修の供給・実施
4.評価・測定
5.組織変革のファシリテーション
6.学習機能・環境の管理
7.コーチン
8.組織ナレッジの管理(ナレッジマネジメント
9.キャリアプランニング・タレントマネジメント

 

一番目に挙げられている、「ラーニングのデザイン」とは、一般的に「インストラクショナルデザイン」と呼ばれているもので、人材開発のプロフェッショナルにとって最も基本的な能力と言えるものです。

 

一言で言えば、教育プログラムを設計・開発するための方法論です。
その方法論を効果的に実践するために、認知心理学経営学、教育工学、システム工学など学際的な知見を統合した研究が進んでいます。

 

インストラクショナルデザイン」の理論に基づいた人材開発は、アメリカの企業で特に導入が進んでいましたが、日本やアジアの企業でもかなり浸透してきているので、人材開発に携わる方であれば、以下の「ADDIEモデル」のプロセスは知っていると思います。

 

・分析(Analysis)
・設計(Design)
・開発(Development)
・実施(Implementation)
・評価(Evaluation)

 

プロセス自体は非常にシンプルで、特に教育に限った特殊なものでは無いように見えます。

 

しかし、そのシンプルなADDIEモデルに沿って、実際に研修の設計から評価までを自ら実践したり、外部の研修を評価して選択するには、関連する周辺領域も含んだ専門的な知識も必要になります。

 

その専門的な知識を体系的に学べる本が、「インストラクショナルデザインの原理」です。

 

インストラクショナルデザイン(以下ID)は、唯一の万能な手法ではありません。

 

本書にもこう書かれています。

 

「IDのベストモデルが1つだけ存在すると考えられるのは誤りである。実際にはデザイナーとデザイン状況の数だけ、異なるモデルが存在する」(P3より引用)

 

実際に、IDに関する本も、本書以外にも色々出ていますし、それぞれの学者や実務家の方の持論もあります。

しかし、それぞれの各論の根本は、本書に書かれている、ロバート・M. ガニェやジョン・M. ケラーの理論が土台となっています。

 

本書は、教育プログラムを開発したり評価したりするために必要な知識はほぼ全てが網羅されていると言っても過言ではない充実した内容になっています。

 

例えば、研修の効果を測定する必要性が高まっていますが、そのためには測定可能な目標設定をして、その実現に必要なカリキュラムを設定する必要があります。

 

当たり前のことではありますが、研修の測定可能な目標を設定するのは、いざとなると意外と難しいと感じる方も多いと思います。

 

本書では、「目標記述の5要素法」を提案しています。

具体的には、目標を以下の5つの要素で構成します。(P153より引用)

 

1.状況
(学習の成果がパフォーマンスとして実行される文脈)

2.実行される学習の種類
(学習の種類に対応する「学習した能力」を示す動詞:能力動詞)

3.パフォーマンスの内容あるいは対象

4.行動の観察可能な部分
(動作を示す動詞)

5.パフォーマンスに適用される道具、制限あるいは条件
(受け入れ可能なパフォーマンスのレベル)

 

本の中では、それぞれの項目について詳細に解説されていますが、目標設定だけでもかなり奥が深いものであることが良くわかります。

 

また、IDは決して研修を作るための手法ではありません。もっと大きな意味合いとしての「学習」のプロセスを支援するものです。

 

その「学習」とは、本書ではこう定義されています。(P5より引用)

 

学習とは、ロバート・ガニェ(Gange.1985)の定義によれば、行動に見る事ができる学習者の特性や能力が変化する過程である。

 

つまり、IDとは、人が成長するプロセスを効率的かつ効果的に促進するための、幅広い範囲で役立つ手法なのです。

 

専門書なので、価格も高く、かなり分厚く、読み込むのは多少難しく感じられるかも知れません。

 

しかし、教育プログラムを開発したり評価したりするために必要な知識が、全て網羅されていると言っても過言ではない充実した内容になっています。
そして、その知識を柔軟に捉えて自分の現場の状況に合わせて、自ら考えながら実践していけば、インストラクショナルデザイナーとしての力量がどんどん上がっていくでしょう。

 

そのような意味で、人材開発のプロフェッショナルとして必読のバイブルと言える良書だと思います。