ソーシャル・キャリアコンサルタント 五十嵐郁一 Official Blog

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戦略的HRの基本装備としての「応用行動科学」を学ぶ本

「理論を知らずに実践したがる人は、舵と羅針盤のない船に乗り込む水夫のようなもので、自分がどこに投げ出されるのかまるでわかっていない」


これは、有名なレオナルド・ダ・ヴィンチの言葉です。


人事、特に人材開発に関係する分野において、「舵と羅針盤」に相当するもので基本的なものを一つあげるとすれば、「応用行動科学」であると言って良いでしょう。


応用行動学とは、人間の対人行動に関する諸理論を応用して、職場などの現実の場面において人間関係的側面の諸問題に働きかけていくものです。
心理学・社会学・人類学・経済学・政治学など幅広い関連分野の諸理論を土台とした、学際的な研究分野となっています。


特に、社内で組織変革をリードするグローバル企業(特にアメリカ)の戦略的HRの人材開発スタッフにとって、応用行動科学は欠かすことの出来ない常識的な知識となっています。


しかし、あくまでも一般論ですが、日本企業の多くは、ゼネラリストとしてジョブローテーションで幅広い業務を経験することが優先されるため、人材開発においても、グローバル企業に比べて専門知識の習得の機会が少なめになる傾向もあるようです。


そこで、応用行動科学の基本を学ぶための定番となっている本を2冊ご紹介します。


◆「【新版】組織行動のマネジメント―入門から実践へ 」
スティーブン P.ロビンス (著), 高木 晴夫 (翻訳)


応用行動科学といってもかなり領域は幅広いですが、マネジメントにおいて特に重要視されているのが、「組織行動学」です。


組織行動学とは「組織内で人々が示す行動や態度についての体系的な学問である」と定義されています。


本書は、その組織行動学の教科書として、アメリカ国内の1,000校以上の大学で教科書として採用され、その他世界各国でも使われています。


組織を、個人レベル・グループレベル・組織システムの3つのレベルに大きく分けて、体系的に、行動の説明・予測・統制をいかにうまく進めるかについて理解できるように構成されています。


日本企業の人事スタッフや事業部門のマネジャーが本書を読む価値については、訳者あとがきの中で高木晴夫氏がこう書いています。


「君たちがグローバル市場で競争するとき、仮に競争相手がMBAホルダーなら、人と組織のマネジメントはこの教科書で学んでいると想定する方がよい。その競争相手がチームを持ち、リーダーシップを発揮して君たちと戦う時、この教科書で教わった知識を使っているはずだ」


本書は、上の言葉通り、グローバル市場の競争相手と同じ土俵に立つための理論武装の第一歩になると思います。


◆「入門から応用へ 行動科学の展開―人的資源の活用」
ポール ハーシィ (著), デューイ・E. ジョンソン (著), ケネス・H. ブランチャード (著), 山本 成二 (翻訳), 山本 あづさ (翻訳)


本書は、「組織行動のマネジメント」よりも、組織内における「個人のレベル」に重点がおかれていて、マネジメントやリーダーシップに関する基本的な理論を体系的に学ぶ事が出来ます。


特に、フォロワーの状況に応じて適切なリーダーシップスタイルを使い分ける「状況対応リーダーシップ」について、詳細に書かれています。


書名を見ると難しそうですが、図表も豊富で、著者も学者目線ではなく実務家としての目線で書いているので、内容は理解しやすいと思います。


例えば、こんな記述があります。


「応用行動科学は、物理学や化学、生物学などの精密科学とは異なることを知るべきである。マネジメントには厳密な意味での原理原則や普遍的真理は存在しない。人々のあり方を予見することは至難である。行動科学のできることは、『打率を上げる』ことである」


これは、まさにマネジメントの現実の難しさを心得た、「実務家」目線の言葉だと思います。


以上、2冊ご紹介しましたが、双方とも基本的な理論を俯瞰する部分があるので、内容には多少重複もあります。


しかし、それぞれに掘り下げている部分も異なるので、人材開発やマネジメント、組織変革の基本書として、2冊とも手元に常備しておく価値はあると思います。