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戦略人事のビジョンを実践するための教科書〜Human Resource Champions(邦訳「MBAの人材戦略」)

MBAの人材戦略

 

企業がグローバリゼーションやイノベーションを促進してより競争力を高めるために、人事部門が果たすべき役割として、ミシガン大学のデイビッド・ウルリッチ教授は以下の4つを提唱しています。

1.戦略パートナー (Strategic Partner)
2.管理のエキスパート (Administrative Expert)
3.従業員のチャンピオン (Employee Champion)
4.変革のエージェント (Change Agent)

 

上記の内容については以前の記事でも簡単に紹介しましたが、ウルリッチ教授の4つの役割モデルは、GE、P&G、サムスンヒューレット・パッカードなど、競争力の高いグローバル企業で取り入れられています。

 

P&Gのホームページには、ウルリッチ教授の4つの役割モデルに準じた人事のコンセプトが掲載されているので、以下のURLを参照してください。

 

http://pgsaiyo.com/campus/function/hr/hrfm.html

 

では、ウルリッチ教授の4つの役割を実践して、人事部門がより経営への貢献度を高める「戦略人事」になるためにはどうすればよいのでしょうか?

 

その答えを得るための古典として定評のある教科書が、ウルリッチ教授が執筆した「Human Resource Champions(邦訳「MBAの人材戦略」)」です。

 

サムスンでは、人事部員を世界ナンバーワンの専門家に育成することを重視していますが、そのための育成コースの事前課題として「Human Resource Champions」を全員に配布しレポート提出を義務付けていました。

邦訳は入手しにくくなっているようですが、一読の価値はあると思います。

 

同書の中で、ウルリッチ教授は4つの役割を果たすための手法を解説していますが、全体的なポイントとして、人事スタッフとラインマネジャーとの連携が必須であると説いています。

 

「人材経営はもはや人材経営部門のみの責任ではなく、むしろ企業の広範な部門を含む人材経営コミュニティーによって責任が担われる。」
(出典:「MBAの人材戦略」P290)

 

「ライン管理者、あるいは人材経営専門職が自分たちだけで努力を重ねても人材経営チャンピオンにはなり得ない。この両者はパートナーとして協力していくべきである。これまで多くの壁がラインとスタッフの間をさえぎってきた。」
(出典:「MBAの人材戦略」P292)

 

先に紹介した、P&Gのホームページには、人事部門の方が事業部門と連携している事例も紹介されているので参照してください。

 

http://pgsaiyo.com/campus/function/hr/case1.html

 

MBAの人材戦略」の中では、ヒューレット・パッカードが、ラインマネジャーと人事スタッフの責任の所在を、以下のように明確に定義している事例が紹介されています。

 

1.戦略パートナー (Strategic Partner)

 ・顧客ニーズ
  効果的なビジネスと人材経営戦略
 ・責任の所在
  ライン 85%/人事 15%(戦略と人材経営の統合)

2.管理のエキスパート (Administrative Expert)

 ・顧客ニーズ
  管理プロセスの効率
 ・責任の所在
  ライン 5%/人事 95%(サービスの提供)

3.従業員のチャンピオン (Employee Champion)

 ・顧客ニーズ
  従業員からのコミットメント
 ・責任の所在
  ライン 98%/人事 2%(マネジメント・サポート)

 

4.変革のエージェント (Change Agent)

 ・顧客ニーズ
  組織の生産性向上

 ・責任の所在
  ライン 51%/人事 49%(変革のマネジメント)

 

※HP社では人事部門の顧客を、「企業全体」「従業員および管理者」と定義付けています。

 

このように、それぞれの責任を分担して連携することがとても重要ですが、その分担の割合を配分したり成果に責任を負う主体となるのは人事部門です。

 

また、ニーズや責任の分担以外にも、それぞれの役割について具体的な活動や必要とされる能力など明確にして、人事部門のビジョンとして掲げています。

 

以上のように、「Human Resource Champions(邦訳「MBAの人材戦略」)」には、多少古くはありますが様々な事例や手法が詳細に書かれているので、本質を読み取れば、実践の参考になると思います。