ソーシャル・キャリアコンサルタント 五十嵐郁一 Official Blog

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人が能動的に学べる「場」を創るために必要なことは・・・?


企業の中では、様々な研修やワークショップなどの学びの場が設けられます。
その主催者側の方からよく聞くのは、「もっと参加者の方に、当事者意識を持って受け身ではなく能動的に関わって欲しい」という声です。


では、どのようにすれば、そのような学びの場をつくることができるのでしょうか?


その問いに対する、新鮮なヒントを多く与えてくれる良書が、「プレイフル・ラーニング〜ワークショップの源流と学びの未来」上田信行×中原淳著)です。


「プレイフル・ラーニング」とは、教育工学の第一人者で、先進的なワークショップを実践してきた同志社女子大学教授の上田信行先生が提唱するコンセプトです。


それは、以下のように定義されています。


「人々が集い、ともに楽しさを感じることができるような活動やコミュニケーションを通じて、学び、気付き、変化すること」


「楽しさ」と「学び」は、ごく一般的には異なるものと捉えられがちですが、「プレイフル・ラーニング」とは、言葉を変えれば、「『学び』そのものを『楽しみ』にする」ことであると言えるでしょう。


そして、このコンセプトが、冒頭の問いに対する答えの一つになります。


上田先生は、本書の中で次のように言っています。


「人は没頭できる活動と環境さえあれば、やる気が生まれてくる」


この考え方をベースにすれば、参加者が能動的に関わるイキイキとした「学びの場」を創造することが可能になります。


そう言えるのは、「プレイフル・ラーニング」というコンセプトが、単なる理想論ではなく、過去30年以上に渡って世界で積み重ねられてきた学習研究の理論を、上田先生が実際にご自身が主催するワークショップで実践してきた結果として生み出されたものだからです。


では、私たちが「プレイフル・ラーニング」を実践するためには、何が必要になるのでしょうか?


それは、大きく言えば「理論」と「仕掛け」です。


まずは、背景となる理論を知りプレイフルなマインドを確立し、人が活動に没頭できる環境をつくるための仕掛けとして、様々な手法やツールを駆使することが必要になります。


その理論も、上田先生が実践してきた「仕掛け」の事例も、本書の中に書かれています。


また、「プレイフル・ラーニング」の集大成となる実験的なワークショップも、上田先生と東京大学准教授の中原淳先生が主催者となって開催されています。


直近では、12月8日と9日の2日間、「学び×これから」をテーマとした「Toyful Meetup 2012」というワークショップが開催され、私も参加してきました。
そこには、参加者も主催者もファシリテーターも立場による垣根が無く、全員が主役となり一体感を持った創造的な学びの場が生まれていました。


開催の前から、Facebookページが立ち上げられていましたが、終了後も多くの書き込みが寄せられていることも、活性化された学びの場であったことを現していると思います。

Toyful Meetup 2012
http://www.facebook.com/ToyfulMeetup2012


「プレイフル・ラーニング」の背景となる理論については、本書からポイントとなる言葉を引用しておきます。


「人は知識を伝達される容器である」といった受動的な人間観ではなく、「人は自ら環境に働きかけ、考え、知識を構成することができる存在だ」といった能動的な人間観が広がってきたことがあります。(P75)


つまり学べるかどうか、成長できるかどうかというのは、その人の元々持っている能力の問題ではなく、どれだけ自分の意識を課題に向けられるかどうかの差である、というわけです。(P70)


ヴィゴツキーはこの「1人でできるようになること」と、「誰かの助けによってできるようになること」という、発達における2つの段階の差、距離のことを「発達の最近接領域」と呼び、そこは他者との相互作用によって発達しうるセンシティブなゾーン(領域)なののだ、という考え方を示しました。(P98)


人が「今の自分よりも少し背伸びした自分」をパフォームしつつ、「将来の自分をもつくりあげるプロセスに注目が集まっており、「学習環境としての舞台の可能性」が模索され始めています。(P100)


そして、そのような理論をベースにした様々な「仕掛け」が、実際に「Toyful Meetup 2012」のプログラムに織り込まれていました。
上記のFacebookページそのものも、その仕掛けの一つです。


すぐに活用できそうな面白い仕掛けが沢山ありますが、ここではご紹介しきれないので、興味がある方は、ぜひ本書を読んでいただければと思います。


本書は、教育の仕事に専門的に関わっているような方だけでなく、様々な職場のマネジャーの方が読んでも、部下の方の成長を促す「プレイフル」な職場作りのヒントが得られると思います。


最後に、本書の中で私にとって特に印象的だった上田先生の言葉を引用しておきます。


インプットでは世界は変わらない。自分の中だけ変わるかもしれないけど世界は変わらないですよ。


だから、「学びはアウトプット」。そうすると、世界が変わるんです。