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グローバルリーダーが成長していく旅の物語〜「リーダーは自然体」(増田弥生・金井壽宏著)


地球規模の視野をもって活躍できるビジネスリーダーはどのように成長していくのか?


今、多くのグローバル企業の人々がこのような問いの答えを見つけるために、様々なことを考え試行錯誤を重ねているでしょう。


以前このブログの記事でも紹介したリーダーシップ研究の第一人者であるウォレン・ベニス氏は、リーダーの成長について以下のように言っています。


「リーダーは最初からリーダーを目指しているのではなく、自分を思う存分に表現する過程でリーダーになるということである」


では、「自分を思う存分に表現する過程」とは具体的にどのようなプロセスなのでしょうか?


その実例を、「良い仕事をして成長したい」と願う人であれば誰にでも共感できるように、詳細にわかりやすく教えてくれる良書があります。


「リーダーは自然体」という本で、元ナイキのアジア太平洋地域人事部門長の増田弥生さんと、経営学者である神戸大学大学院の金井壽宏教授の共著です。
(増田弥生さんは現在フリー)


この本では、増田弥生さんが、グローバルなビジネスリーダーとして成長していく「旅」が描かれています。


リコーに役員秘書として入社し、自称「お気楽OL」としてキャリアをスタートしてから、リーバイスのアジア太平洋地域本社タレントディレクターを経て、ナイキのアジア太平洋地域人事部門長として活躍し、フリーになるまでのキャリアにおいて、増田さんがどのような考え方をしてどのような行動をしたかが、ご自身の言葉で率直に語られています。


増田さんは、リコーに入社した時から人事のプロフェッショナルとしてグローバルに活躍したいと思っていた訳ではありません。また、肩書きを上げていくことを目指していた訳でもありません。


ただ目の前の仕事の問題について、常に率直に疑問を投げかけ、本質的な部分について自分が心から納得できることを大切にしてきた結果の積み重ねが、そのままリーダーとしての成長となっていきました。


そのプロセスは、まさにベニス氏が言うところの「自分を思う存分に表現する過程」そのものであると私は感じましたが、増田さんのケースでそれに相当することを、金井教授は「自然体」という言葉で表現しています。


その「自然体」と言われるスタイルについて、増田さんは本の中でこう語っています。


「ただ、自分自身に誠実であろうとは心がけており、自分を何らかの役にはめて演じたり無理したりせずに、率直に自分のあるがままでいようとしています。そのままの自分を脚色せずに表現することが相手に対しても誠実だと思うからです」


増田さんが、心の底から大切にしている「誠実さ」こそが、周囲の人々の信頼を得る源泉となり、リーダーとしてリーバイスやナイキにおいてグローバルな組織開発を成功させることができたのです。
この本では、その実例となるエピソードが数多く挙げられていて、とても参考になります。


では、誠実さを核とした自然体のリーダーシップを発揮するために、必要なものは何なのでしょうか?


それは、「自己理解」と「自己受容」です。


増田さんは、こう語っています。


「リーダーシップを身につけ成長していくためには、今の自分をできるだけ正確に知る『自己理解』と、その自分を受け入れる『自己受容』が欠かせないと私は思っています。この二つがうまくできないと、リーダーとして成長していくのはかなり難しくなります。なぜなら、学習の成果(成長度合い)は本人の自覚の大きさに比例するからです」


「自己理解」については、自分のあるがままの現状を理解し、自分は何者なのか?どんな価値観を持っているのか?といったことを明確に自覚するということです。


また、「自己受容」については、増田さんはこう語っています。


「自己受容とは、自分をあるがままに受け入れつつ、足りない部分を成長の余地と見て努力すること、そして努力する自分を愛おしく認知しながら成長させていくことです」


人間は神ではないですから、完全無欠なリーダーなど存在しません。
どんなリーダーにも「成長の余地」は必ずあります。
「成長の余地」があるということは、当然、失敗の可能性もあり、もろい部分があるということです。

そのような、「もろさ」「弱さ」から目を背けるような姿勢は、あるがままの自分を偽ることになり、「誠実さ」を損なうことに繋がります。

そして、そのような弱みも含めたありのままの自分を認めることができる「自己受容」を、増田さんは重視しています。


自己受容は、人を巻き込んでいくプロセスにも欠かせません。なぜなら、自分自身を巻き込めない、つまりその気にさせられない人に、他者を巻き込んで、その気にさせることはできません」

「自己受容ができている人は、自分を認め、信じ、許すことができます。そして自信を持ちつつ謙虚に成長を続けます。その度合いの大きさは、そのままリーダーとしての器の大きさとなり、他者を認め、信じ、許し、その成長を支援することにもつながっていきます」


「謙虚さ」と「自信」は言葉だけ見ると相反するように思えますが、その両方を兼ね備えることができることが、リーダーとしての「器」なのでしょう。


「リーダーは自然体」を読むと、上に引用したような、増田さんの実体験から紡ぎ出される誠実な想いが込もった言葉に、数多く出会う事が出来ます。

そしてその言葉は、リーダーとしての「在り方」を考える上で、とても有益な示唆を与えてくれ、私はその全てに深く共感しました。


本の中には、上に引用した内容の他にも、グローバル企業において成果を上げるために求められるリーダーや人事の要件などについても書かれています。


また、金井教授によるリーダーシップ開発の理論的な側面からの解説もあります。
そのため、増田さんのリーダーとしての成長プロセスや考え方が、決して属人的で特殊なものではなく、理論的な正当性があることも良くわかります。


リーダーとして活躍したい方や、リーダーを育成する立場の方、グローバルな戦略人事のプロフェッショナルを目指す方にも、ぜひ読んで頂きたいと思います。