ソーシャル・キャリアコンサルタント 五十嵐郁一 Official Blog

社会起業家×キャリアコンサルタント=ソーシャル・キャリアコンサルタント → より幸せな社会の実現を目指して

初めて人事関連部門で社員教育の担当になった方に贈る3冊の本

春になり人事異動も多い時期になってきました。

人事部や総務部に異動になり、初めて社員の教育に携わることになった方のために、まず最初に読んでおくと良い本をご紹介します。

社員教育、人材開発、能力開発など色々な言葉が使われますが、そのような分野で良い仕事をしていくためには、どのような知識やスキルが必要なのでしょうか?

アメリカには、ASTDという世界規模で人材開発を支援する団体があります。
100カ国に約8万人の会員がいる、人材育成施策や教育研修などに関する研究や情報提供を行っている、かなり大きな団体です。

ASTDでは、人材育成のプロフェッショナルに求められる能力を、9つの分野で定めています。
そして、その能力を認定するCPLPという資格制度も推進しています。

CPLPの9つの認定項目は以下の通りです。

1.ラーニングのデザイン
2.ヒューマンパフォマンスの改善・向上
3.研修の供給・実施
4.評価・測定
5.組織変革のファシリテーション
6.学習機能・環境の管理
7.コーチン
8.組織ナレッジの管理(ナレッジマネジメント
9.キャリアプランニング・タレントマネジメント


かなり幅広い領域の知識やスキルが網羅されていますが、これが人材育成のプロフェッショナルとしての能力要件のグローバルスタンダードと言えるでしょう。それぞれの項目については、以下のリンク先に掲載されている、ASTDインターナショナルジャパン会長の中原孝子さんのインタビュー記事を参照してください

ヒューマンキャピタルOnline「日本の人材育成は逆ガラパゴス

http://www.nikkeibp.co.jp/article/hco/20111102/289366/?P=2

ASTDが定めている知識体系は、確かに企業において人材育成を効果的に進めるためには、どれも欠かせないものだと思います。
人材育成を担当する方の、個人的な経験則や想いも大切ですが、それだけでなく普遍的な理論を理解しておくことも必要です。

しかし、はじめて人材育成の世界に入った人が、先に挙げたASTDが定める幅広い分野の能力を、いきなり身につけることは難しいでしょう。まだ日本では体系的に学べる場もほとんどない状況です。

まずは、以下の3冊を読んでおけば、9つの分野に関連する最低限の重要な知識を理解する事ができると思います。

◆人材開発マネジメントブック―学習が企業を強くする

福澤 英弘 (著)



まず、最初に読む本として適していると思います。
「理論編」と「実践編」の大きく2部構成になっています。

「理論編」では、人材育成に関する心理学・経営学などの理論の基本を解説しています。
そもそも、「能力とは何なのか?」「学習とは何なのか?」。
普段、何気なく使っている言葉も、いざ定義や意味を問われると、うまく答えられない場合もあるのではないでしょうか?
本書では、ごく基本的な言葉についても、理論的な背景を知る事が出来ます。

「実践編」では、研修を企画したり運営する等の、実務に必要なノウハウを理解する事が出来ます。
著者の福澤英弘さんは、実際に企業研修部門の責任者を務めてきた方なので、キレイ事ではない泥臭い実践的な記述になっています。
実務のヒントになる部分も多いでしょう。

◆教材設計マニュアル―独学を支援するために

鈴木 克明 (著)



先に書いたように人材育成の仕事をするにはかなり幅広い分野の知識が必要ですが、その中でも特に重要なのがインストラクショナルデザインという考え方です。

本書では、「釣り入門」という独学で学ぶための教材をつくるプロセスを事例にしながら、インストラクショナルデザインの基本的な概念をとてもわかりやすく学ぶ事が出来ます。

インストラクショナルデザインの考え方は、人材育成における教材や集合研修、e-Learningなどの様々な手法の根本となるものです。

企業での人材育成をテーマとした本ではありませんが、仕事をする上で参考になる部分はかなり多いと思います。

例えば、外部の研修会社に依頼する場合も、その教材やプログラムの構成が適切であるかどうかを見極める必要がありますが、その際にも本書で学んだ知識が役に立つことでしょう。

◆はじめての教育効果測定―教育研修の質を高めるために

堤 宇一 (著), 久保田 享 (著), 青山 征彦 (著)



企業の業績が低迷してくると、多くの場合、人材育成にかかる「教育費」が真っ先に削減の対象になりやすいといわれます。

人材育成には、かなり大きな労力と時間と費用がかかります。最近では、特に、研修などを実施する時に、費用対効果の検証が求められる傾向が強くなってきています。

だからこそ、教育効果の測定は正しい手法で行う必要がありますが、本書ではそのための基本的な知識がわかりやすく解説されています。
具体的な事例を通して、測定シートやアンケートのサンプルも交えながら、教育効果測定のプロセスを学ぶことが出来ます。

以上、3冊の本をご紹介しましたが、それぞれの本の中にも参考文献として多くの良書が挙げられています。
次のステップとして、それらの本も読んで知識を深めていけば良いでしょう。

最後に、私自身に対する自戒の意味も込めて、東京大学准教授の中原淳先生の言葉を引用しておきます。

あなたは、大人に学べと言う。
あなたは、大人に成長せよと言う。
あなたは、大人に内省せよと言う。

それならば、そういう「あなた」はどうなのだ?

あなた自身は、学んでいるのか?
あなた自身は、成長しようとしているのか?
あなた自身は、内省しようとしているのか?