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イノベーションを起こす人材を育成するには?

 

今、世界中の企業が、新たなイノベーションを求めています。

 

では、新たなイノベーションを生み出せるのは、どのような人材なのでしょうか?
イノベータのスキル要件を明確にすれば、育成も効果的にできるでしょう。

 

イノベーション研究の第一人者である、ハーバード・ビジネス・スクール教授のクレイトン・クリステンセンらが、イノベータに特徴となる5つのスキル(発見力)を明らかにしました。

 

その研究成果は、最新の著書「イノベーションのDNA 破壊的イノベータの5つのスキル」にまとめられています。

 

まず、イノベータのDNAとも言える5つの特徴的なスキル(発見力)とは、以下の通りです。

 

1.関連づける力

2.質問力

3.観察力

4.ネットワーク力

5.実験力

 

クリステンセン教授らは、約8年間にわたる研究からこの5つのスキルを抽出しました。
その研究は、75カ国以上の500名を超えるイノベータと5000人を超える経営幹部のデータを分析したり、100名近くの革新的な起業家やCEOに対するインタビューを行うという、かなり大規模なものです。

インタビューの対象も、アマゾン・ドットコムジェフ・ベソスP&GA・G・ラフリーなどの著名人が多く含まれています。

 

今までも、イノベータの特性については色々なものが言われてきました。
それは、表現に多少の違いはあれ、「5つのスキル」とほぼ重なるものも多かったと思います。
見方によっては、それほど目新しいものではないかもしれません。

 

しかし、その根拠となる研究データについては、過去に類をみない実証的なものです。単に、スティーブ・ジョブスのような、特定の個人だけを分析したものではないのです。

 

だからこそ、クリステンセン教授らが提示した「5つのスキル」は、イノベータを育成するためのフレームワークとして、有効に活用できるものだと思います。

 

本書の中でも特に強調されているのは、「5つのスキル」は後天的に育成できるという主張です。

 

本書にはこう書かれています。

 

イノベーションに必要な能力のほぼ3分の2が、学習を通じて習得できる。まず、能力について理解し、練習を積めば、やがて自分の創造力に自信を持てるようになる」

 

遺伝に関する先行研究でも、創造性は、知性(IQ)よりも遺伝で説明できる割合が少ないという結果がでているのです。

 

では、「5つのスキル」とはどのような力なのでしょうか?

 

1.関連づける力

 

これは、一言で言えば、「意外な組み合わせ」を作る力です。
かけ離れた異質なアイディアや商品やサービス、技術などを結びつけることによって、全く新しいものを生み出すのです。

 

組み合わせの素となるものは、特に目新しくない既存のものであったり、他の人の頭の中のアイディアであったりします。
しかし、その「組み合わせ方」が斬新であれば、イノベーションを起こすことができるのです。

 

そして、その「関連づける力」を誘発するのが、その他の4つのスキルです。

 

2.質問力

 

質問というのは、特に特別なものではないように思われているかもしれませんが、イノベーションのきっかけとなるとても重要なものです。

 

クリステンセン教授らはこのように書いています。

 

「イノベータは『いまどうなのか』(現状)と『これからどうなるのか』(可能性)について理解を深めるために、たくさんの質問をする。無難な質問は捨て置いて、型破りな質問をする。質問によって現状に異を唱え、おそるべき激しさと執拗さで時の主流派を脅かすことも多い」

 

インドのタタグループ会長ラタン・タタはこのように言っています。

 

「疑う余地のないことを疑え」

 

つまり、「質問力」とは、既存の枠組みや常識を越えて、新たな可能性を探求する力だと言えるでしょう。

 

3.観察力

 

以前から、イノベーションの手法の一つとしてエスノグラフィーが注目されていましたが、やはり、あたかも人類学者のように顧客を「観察」する力は、イノベータの重要なスキルなのです。

 

クリステンセン教授らによると、次のような枠組みで観察を行うと新たな発見の可能性を高めることができます。

 

  • 顧客がどんな用事を片づけるためにどんな製品を使っているかを積極的に観察する
  • 意外なことや普通でないことに注目する
  • 新しい環境の中で観察する機会を見つける

 

4.ネットワーク力

 

これは、多様な人たちと幅広くつながることで、新たなアイディアを創造することです。

 

人とのつながりと言っても、「ネットワーク力」は俗に言う「人脈」とは少し異なる意味合いがあります。

 

一般的に「人脈づくり」というと、自分や商品を売り込んだり、仕事を有利に進めたり出世に利用したりということを、目的にする場合があります。

 

しかし、イノベータはそのような目的の「人脈づくり」はあまりしません。

あくまでも新しいアイディアや洞察を引き出すために、色々な考えや視点を持った自分と異質な人たちとのネットワークを作り上げるのです。

 

5.実験力

 

これは、有名なエジソンの言葉に象徴される力と言えるでしょう。

 

「失敗などしていない。うまくいかないやり方を一万通り見つけただけだ」

 

イノベータは、実験を重ねながら、自分のアイディアが実際にどの程度成功するかを予測するための手がかりを手に入れ、革新的なビジネスモデルを粘り強く練り上げていくのです。

しかし、実験と言っても、イノベーションにつなげるには、科学者が実験室で行うようなものよりも、幅広くとらえる必要があります。

 

クリステンセン教授らは、イノベータは次の3種類の実験のうち、少なくとも一つを繰り返し行っていると指摘しています。

 

  • さまざまな試みを通して新しい経験をすること
  • ものを分解すること
  • 実証実験や試作品を通してアイディアを検証すること

 

例えば、一番目については、異文化の中で暮らしたり働いたりすることも含まれます。

 

実は、この幅広い実験力こそが、イノベータと非イノベータを最も区別するスキルなのです。

 

以上が、「5つのスキル」の概要ですが、本書では、それぞれのスキルを伸ばすためのヒントも提示されています。

例えば、このような面白いヒントもあります。

 

「睡眠によって、つながりのないものをつなげて、すばらしいアイデアを生み出せる確率が平均33%も高まるという」

 

また、「5つのスキル」を組織やチームに適用する方法も提示されています。

 

興味のある方は、本書を読んでいただければ、多くの有益なヒントを得られると思います。

 

イノベーションと言っても、いきなり大上段に構えてしまうと難しいと思います。
クリステンセン教授らも、こう言っています。

 

「とはいえ、われわれ一般人は多くの些細な(派生的)イノベーションを通して、世の中を変えていくのだろう」

 

まずは、身近な問題に「5つのスキル」を試して、確実な一歩を踏み出すことが大切なのでしょう。