

「社員が、やらされ感を持ちながらでなく、自ら考えて行動するようになって欲しい・・・」
ほとんどの会社の管理職や人事の方が、このような気持ちを持っていると思います。
では、どうすれば社員が自ら動くようになるのか?
この問いかけに答えてくれる本が、「人を伸ばす力〜内発と自律のすすめ」です。(本に関する詳細は記事中のリンクを参照して下さい)
「内発的動機付け」という言葉がこの本の主題ですが、これは外部から働きかけられて出てくるのもではなく、自分自身の内部からわきあがってくるモチベーションの事です。
言葉自体は知っている方がほとんどだと思いますが、その心理的な仕組みや、科学的根拠を理解している方は少ないようです。
もし、「社員に自ら動いて欲しい」と願うのであれば、そのための「内発的動機付け」について、せめて知識レベルで熟知しておく事は必要だと思います。
こんな風に書いていると、「小難しい本で実務的には役に立たないのでは?」と思われるかも知れませんが、一般向けなので内容はかなりわかりやすいです。
以下に、簡単に書かれている内容のごく一部をまとめておきます。
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◆内発的動機付けの要件
著者のエドワード・L・デシ教授は、人が自ら動きたくなるのは、以下の3つの欲求が満たされるからと述べています。
1.自律性への欲求
→自分の裁量で決定したい
2.有能さへの欲求
→自分はその仕事をこなす力があるという感覚
3.関係性への欲求
→他者と絆を結びたい、人の役に立ちたいという気持ち
つまり、「社員に自ら動いて欲しい」と願うのであれば、上記の3つの要件のすべてをそろえる必要があるのです。
では、実際にそのような企業があるのでしょうか?
例えば、有名なリッツカールトンホテルでは、それを実践しています。
1.自律性への欲求
社員に対し、2000ドルまで自由に使って自ら考えた顧客サービスを実践して良いという裁量を与えている。
2.有能さへの欲求
「ファイブスター制度」という褒賞制度があり、3ヶ月に1度、5人の社員を表彰して誇りと自信を持たせる。
3.関係性への欲求
他の社員から協力を得られた時に、自らの感謝の気持ちを書いて相手に渡せるよう、ファーストクラスカードという仕組みがある。
カードをもらった社員は、仲間の役に立てた事が実感できる。
リッツカールトンの事例は「人を伸ばす力」には書かれていませんが、読んでから少し考えてみれば、このような事例や、自社でのヒントが沢山思い浮かんできます。
特にリッツカールトンのように、全社的な制度が出来なくても、マネジャーの態度次第で現場で実践できるようなアイディアも浮かんできます。
また、企業の中では「自ら動いて欲しいけど、会社の方針と合わない行動をとられては困る」という考えもあると思います。
では、内発的動機付けと、会社の規範を統合するにはのはどうすればいいか?
その問いに対するヒントも、「人を伸ばす力」の中に書かれています。
ぜひ、人事担当者やマネジャーの方に、一度手に取ってみて頂きたい1冊です。
人を伸ばす力—内発と自律のすすめ