ソーシャル・キャリアコンサルタント 五十嵐郁一 Official Blog

社会起業家×キャリアコンサルタント=ソーシャル・キャリアコンサルタント → より幸せな社会の実現を目指して

人材育成の拠り所となるもの


職場のメンバーのモチベーションアップや能力向上など、人を育てる上での課題は尽きません。
私たちは、その課題に対して打ち手を考え解決していかなければなりませんが、その拠り所として重視すべきものはなんでしょうか?


それは、実証的な「理論」や「定石」です。


日本各地のホテルや旅館を運営し高い業績を上げている星野リゾート社長の星野佳路氏は、「星野リゾートの経営は『教科書通り』である」と言い切っています。


星野リゾートの教科書」という本の中で、星野社長は次のように言っています。


「私は1991年に星野リゾートの社長に就任して以来、経営学の専門家が書いた『教科書』に学び、その通りに経営してきた。社員のモチベーションアップも、サービスの改善も、旅館やホテルのコンセプトメイクも、私が経営者として実践してきたことはすべて教科書で学んだ理論に基づいている」


例えば、バブル崩壊後に経営が破綻した北海道のスキーリゾート・トマムの運営を、星野リゾートが引き継ぎ立て直した時には、フィリップ・コトラーの名著「コトラーのマーケティング・マネジメント基本編」に書かれている競争地位別戦略を土台にしました。


では、なぜ星野社長は「教科書通りの経営」を実践し続けているのでしょうか?


星野社長はこう言っています。


「私が参考にする教科書の多くは、米国のビジネススクールで教える教授陣が書いたものだ。彼らは、ビジネスを科学するという思想の下、数多くの企業を対象に手間と時間をかけて事例を調査し、そこから法則を見つけ出し、理論として体系化している。その内容は学問的に証明され、一定条件のもとでの正しさはお墨付きなのだ」


確かに、経営学やマネジメント、リーダーシップ等に関する分野の研究については、実際の企業の事例を分析したり、企業の中で仮説を実行に移して結果を検証したり、実証的に行われています。


そのような研究から導かれた理論は、決して机上だけのものではなく現実に活用できるものと言えるでしょう。


人事部の視点でも、現場の視点でも、人材育成は経営において重要な要素です。


企業内の人材育成についても、経営学や心理学など分野から様々な実証的な理論が提唱されています。


もちろん、人を育てる立場の方が、個人として培ってきた「経験」もとても大切なものだと思います。


しかし、個人で経験できる範囲は限られています。
個人的な経験則に加えて、多くの先人の知恵や経験や研究が濃縮された体系的な「理論」があれば、人材育成においても、より正しい判断ができるようになります。


星野社長は、教科書に従うメリットについて次のように言っています。


経営判断の根拠や基準となる理論があれば、行動のぶれも少なくなる。自分の下した決断に自信を持てるようになり、社員に対して判断の理由を明快に説明できる」


私も、研修プログラムを企画したり講師として人前に立つ際に、恐れを感じるときがあります。

なぜなら、自分の誤りが、多くの人々の誤りに繋がってしまうからです。


だからこそ、星野社長の言葉に深い共感を覚えるのです。


「自分が人に伝えようとしていることは本当に正しいのか?」


そのような不安も「教科書」と向き合うことでかなり解消でき、自信を持つことが出来ます。


また、最近の若いビジネスパーソンは、仕事をする上で、意味や理由をもとめる傾向があります。

部下に対する教育や指導においても、上司が根拠となる理論を持っていれば、部下の「なぜ?」に明快な答えを提示できます。


星野社長も次のように言っています。


「もちろん、社員にも教科書の内容を説明していく。新しい戦略の理論的な背景を伝えることで、仕事の中身ややり方に対する社員の納得感は高まり、改革が進みやすくなる」


このように「教科書」で理論や定石を学ぶことはとても大切ですが、もちろんそれだけでは課題を解決することはできません。


やはり、「理論」に加えて、「理論を自分の状況に応用する力」が欠かせません。


よく「理論は抽象的で、『現場』では使えない」というような言い方をする方もいます。


しかし、それは理論が現場に通用しないのではなく、「理論を現場に応用する力」、言い換えれば「考える力」が不足しているということなのです。


星野社長は、「教科書」を考えながら何度も読み込んでいます。


「書かれている理論を理解すると同時に、『自社にどのようにあてはめればいいのか?』『どこを変える必要があるのか』と考えながら読む。自社の具体的な悩みを考えながら読んでいると、頭の中が次第に整理されていき、やがて打つべき対策が見えてくる」


私は、人材育成に「教科書」を活かす公式を以下のように考えています。


「教科書」+「問題意識」+「応用力」=打ち手


つまり、強い「問題意識」を持って「教科書」と向き合い自分の現場に「応用」すれば、適切な打ち手が見えてくるのです。


打ち手が見えてくれば、後はそれを実行していけば良いのです。


もちろん、すんなりと事が進まない場合もありますが、その時にはまた立ち止まって考えれば良いでしょう。

やはり、「理論を現場に応用する」ための答えがなかなか出てこない場合も多いと思います。


でも、それを諦めずに考え抜くことを続けることによって、「理論を現場に応用する力」に磨きがかかっていくのです。


実際に、星野リゾートが教科書を活かして様々な旅館やホテルの経営を立て直してきた事例については、「星野リゾートの教科書」に数多く紹介されていますので、興味のある方は読んで頂ければと思います。


では、「人を育てる」というテーマでは、どのような「教科書」を選べば良いのか?


それは、これからこのブログの「ブックコラム」でご紹介していきたいと思います[E:happy01]
ぜひ、気が向いた時にアクセスしてみて下さい[E:confident]