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2012年1月

劇団ひとりさんとディズニーランドから教わった人を育てるヒント


タレントの劇団ひとりさんが、以前、読売新聞の書評の中でこんなことを書いていました。


「年齢を重ねるにつれ、そういった『あたり前』の事が如何に正しい事であると分かり始める。
考えてみれば、人類が誕生してから数百万年、その間を生きてきた先輩方が身を挺して繰り返し実験してきた人生の研究結果こそが、その『あたり前』なのである。
僕ら後輩は何の手間もかけずにそれを実践すればいいのだから、ありがたい話だ」


よくよく考えてみると、私たちが出会うような問題のほとんどは、既に多くの人類の先輩が経験したものと本質的には同じです。


そして、その解決策の本質が「当たり前」の事なのです。

その「当たり前」は、人類の長い歴史に根ざしたものであるが故に、私たちの感覚や日々の言葉の中に溶け込んでいます。


例えば、良好な人間関係を築くためにはどうすれば良いでしょうか?


そのためには、「まず自分から笑顔であいさつをする」。


まさに、これは「当たり前」の答えで、誰も異論を唱える事はないでしょう。

でも、それをいつも実践し続けるのは意外と難しいかも知れませんね。


劇団ひとりさんも、こんな風に言っています。


「『ちゃんと挨拶をする』こんな当たり前のことも重要な研究結果である。テレビ局に行き『なんかチャラチャラした若造がいるな』と言っておざなりの挨拶をしてしまい、後にプロデューサーの息子だと知り、脇が汗でびっしょりとなったのはこの私」


私にも似たような経験があり、『当たり前』の事こそ意外とおざなりになってしまうと反省する事は多いです。


人材育成やリーダーシップ・マネジメント等においても、劇団ひとりさんの言葉がそのまま当てはまると思います。


マネジメント研究で有名なヘンリー・ミンツバーグ教授は、「どんな場面でも通用するマネジメントの必勝法など存在しない」と言っています。


確かにその通りなのですが、私は、たった一つだけ、以下のような『必勝法』があるのでないかと思っています。


「『当たり前』を素直に実践する」


やはり、色々と調べてみると、優秀な人材が多く育ち顧客に支持されている企業は、当たり前のことを素直に実践しています。


例えば、東京ディズニーランド。


オリエンタルランドで社員教育を担当していた福島文次郎さんは、著書「9割がバイトでも最高のスタッフに育つ ディズニーの教え方」の中で、リーダーシップの要件について書いています。
(本に興味がある方は、記事冒頭の画像をクリックして下さい。アマゾンにリンクしています)


ディズニーランドにおけるリーダーシップとは以下の二つです。


(教える人が)
1.ホスピタリティマインドを持っている事
2.自分が模範となること


「ホスピタリティマインド」とは、相手を思いやる心のことですが、まさに『当たり前』ですよね。

聖書にも、「何事でも人々からしてほしいと望むことは、人々にもそのとおりにせよ」ということが書かれています。


また、2番目についても、古くから「率先垂範」と言われ続けてきた『当たり前』の事です。

論語にも、「まず言いたい事柄を実行し、その後で、自分の主張を述べる人こそ君子である」という意味の言葉があります。


つまり、多くの人が感動するような高いレベルの顧客満足を誇る東京ディズニーランドは、特別で斬新なことをしているのではなく、紀元前の昔から受け継がれている『当たり前』を実践しているだけなのです。


そして、人を指導するための『当たり前』を上司や先輩が実践している姿を見て、アルバイトを含めた全てのキャストが育っていくのです。


もちろん、組織的に『当たり前』の実践を徹底するためには、それなりの仕組みや仕掛けも必要です。


それも根本的な『当たり前』に立ち戻りながら、それぞれの状況に当てはめて本気で考えれば自ずから答えが出てくる事でしょう。


問題意識を持って本を読めば、諸先輩方の研究結果も参考にする事が出来ます。

「ディズニーの教え方」にも、色々なヒントが書かれています。


例えば、後輩のモチベーションを高めるためには、次のようなことが重視されています。


・笑顔のあふれる職場をつくる

・仕事の重要性を認識させる

・「誇り」をもてる環境をつくる

・指示する時は、必ず「理由」も伝える

・後輩によい点を見いだせば、すぐにほめる


これも、言われてみれば全部『当たり前』ですね(笑)


人によっては、「ディズニーは特別だ」と思うかも知れません。

でも、繰り返しになりますが、東京ディズニーランドのキャストを育てる基本的な考え方は、「ホスピタリティ」と「率先垂範」であり、特別なものではないのです。


決して「魔法」を使っているのではなく、『当たり前』を素直に実践しているだけなのです。


人材育成を進めていく中で色々な課題が出てきますが、頭の中であれこれと難しく考え過ぎるより、人類の先輩が残してくれた『あたり前』をありがたく受け取って、素直に実践していく方が良いのかも知れませんね。

職場によみがえるギリシャ神話


「レディと花売り娘との本当の意味での違いは、彼女がどう振る舞うかではなく、どう扱われるかです」


これは、イギリスの劇作家ジョージ・バーナード・ショーの戯曲「ピグマリオン」の中の台詞です。ちなみに、「ピグマリオン」という言葉は、ギリシャ神話が由来になっています。(神話の内容は文字リンク先を参照して下さい)


この台詞は、少し言葉を変えれば、そのまま職場にもあてはまるのではないかと思います。


「高業績社員と低業績社員の本当の意味での違いは、社員がどう振る舞うかではなく、マネジャーにどう扱われるかです」


つまり、マネジャーが期待をかけて社員に接するのか、そうでないかが、業績に大きな影響を与えるということです。


先日の記事で、スティーブ・ジョブスが社員に大きな期待をかけることで革新的な商品やサービスを生み出す話をしましたが、それはカリスマの特別な事例ではありません。


元ハーバード・ビジネススクール教授のリビングストンは、マネジャーの期待と業績の関係を様々な事例から研究し、「ピグマリオン・マネジメント」という論文にまとめています。
この論文は、「【新版】動機づける力―モチベーションの理論と実践」(DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビュー編集部・編訳)に収録されています。

以下に、リビングストンの結論を引用します。


マネジャーが部下に何を期待し、どう扱うかによって、部下の業績と将来の昇進がほとんど決まってしまう。

優れたマネジャーの特徴とは、「高い業績を達成できる」という期待感を部下に抱かせる能力のことである。

無能なマネジャーは、部下にこのような期待感を与えることができず、その結果、部下の生産性も上昇しない。

部下は部下で、自分に期待されていることしかやらない傾向が強い。


では、「期待」は大きければ大きい程良いのでしょうか?

リビングストンは、こう述べています。


「マネジャーの期待が業績の向上となって表れるには、まずその期待に現実性があるという点をクリアしなければならない」


「部下が上司の期待は現実的で、実現可能なものだと考えないことには、高い生産性の目標を達成させるインセンティブにはなりえない」


つまり、マネジャーが実現可能な範囲で最大限の期待をかけることと、部下がその期待に応えられることを確信することが重要なのです。


では、「実現可能な範囲で最大限」とはどの程度なのでしょうか?


ハーバード大学のデビット・C・マクレランドとミシガン大学のジョン・W・アトキンソンが、期待とモチベーションとの関係を科学的に研究しました。

結果を一言で言うと、次のようになります。


「モチベーションと努力の度合いは、成功する見込みが50%に達するまでは上昇を続け、それを過ぎると下降し始める」


例えば、大企業の新入社員に「3年後に社長になれ!」と言っても本気でその期待に応える努力はしないでしょう。
逆に、「10年後に係長になれ!」と言っても燃えてこないでしょう。


どのくらいの期待が適切かは、会社によって異なると思いますが、「できるかできないか、やってみなければわからない」レベルが最もモチベーションが上がるということを踏まえておけば良いでしょう。


また、ピグマリオン・マネジメントにおいて、絶対に避けなければならないものがあります。


それは、「沈黙」や「冷淡な態度」です。

リビングストンはこう述べています。


「マネジャーが全く口を利かず、冷淡で話づらい様子の場合、部下に不満を感じているか、部下を見込みのない人間であると烙印を押している証拠である」


やはり、マネジャーが心の底から本気で期待をかけ、その期待を熱意を持って伝えなければならないのです。


そして、その期待の影響がもっとも大きいのが若手社員です。


特に、「大卒の新入社員を最初に配属させる先の上司は、社内で一番優秀な人物でなければならない」と指摘しています。


リクルートワークス研究所の調査によれば、正社員の22〜24歳の頃は、「自分を高めたい」「競争に勝ちたい」という「動機」と、成長についての「不安」の双方が高い時期です。


そのような時期に、上司が若手社員に対して大きな期待を心の底からかけ、熱意を持って伝えれば、さらに動機を高めると同時に不安を打ち消すことができるでしょう。


よく、「今の若手は元気がなく受け身」だと言う人もいます。
また、今年の新入社員は「○○型」などとマスコミがレッテルを貼ったりします。


そのような先入観を持ってしまうと、逆に期待のレベルが下がり、若手社員に悪影響をあたえてしまうことになりかねません。


では、どのようなマネジャーが若手を育てる事が出来るのでしょうか?


それは、自らの成功体験からくる自信を持ったマネジャーです。


リビングストンは以下のように述べています。


「優秀なマネジャーには、輝かしい経歴と自分の能力への確信があるため、何のためらいもなく部下たちに高い期待を寄せることができる。したがって、部下たちも上司の期待を現実的なものとして受け入れ、それに応えようと努力する」


そして、さらにこう述べています。


「マネジャーが部下を訓練し、動機づける能力を深く信ずることこそ、現実的で高水準の期待を築く土台なのである」


人を信じ期待できるようになるためには、まず、自分を信じることが大切なのです。

そのためには、自分が、己の成長に高い期待をかけ、それに応えるよう学び続けていくことが必要でしょう。


「【新版】動機づける力―モチベーションの理論と実践」には、「ピグマリオン・マネジメント」の他にモチベーションに関する八本の論文が収められています。
動機付けに自信を持ちたい方は、何かヒントが得られるかも知れません。

興味がある方はご一読頂ければと思います。

人を育てるスティーブ・ジョブスの言葉



アップルの前CEOスティーブ・ジョブスが亡くなってから約3ヶ月経ちましたが、今も書店では関連本が売れ続けているようです。

偉大なイノベーターから学ぶべきことは、とても多いのでしょう。


「スティーブ・ジョブス名語録」(桑原晃弥著)という本の中から、印象的な言葉を紹介します。


「すぐれた仕事を出来ないのは、そう期待されていないからだ」


アップルは、ご存知の通り、iPhoneやiPadなど革新的なヒット商品を次々に生み出してきました。

スティーブ・ジョブスが強いこだわりを持ち、社員に対しても、品質やスピードなどかなり高いレベルを求めていたそうです。


なぜ、アップルの社員たちは、ジョブスのムチャな要求に応えて、素晴らしい製品やサービスを生み出す事が出来たのでしょうか?


それは、ジョブスが、ただ要求するだけではなく、「アップルの社員は、素晴らしいものを生み出す力を持っている」と心から信じて、その期待を社員にストレートに伝えていたからなんです。


自分は期待されていると感じている人の方が、そうでない人よりも高い成果を挙げる。


これは、心理学の世界でも「ピグマリオン効果」と呼ばれる有名な定説になっています。


ジョブスはこんな風に言っています。


「人がすぐれた仕事をできないのは、たいていの場合、彼らがそう期待されていないからだ。誰も彼らのがんばりを期待していないし、『これがここのやり方なんだ』と言ってくれる人もいない。
でも、そのお膳立てさえしてやれば、みんな自分で思ってた限界を上回る仕事ができるんだよ。
歴史に残るような、本当に素晴らしい仕事がね」


実際にジョブスと一緒に働いていた人が、「スティーブにハッパをかけられると、自分一人じゃやれないと思っていた事が出来る」と言っていたそうです。


私たちが、人の成長を願うならば、改めて次のように自分自身に問い直してみるべきなのかも知れません。


まず自分自身が、人間が持つ大きな可能性を心から信じているか?


そして、成長して欲しいと願う人に、その期待をしっかりと伝えているか?


その期待が伝わったかどうかを確かめているか?


思うように人を育てられないと悩む前に、自分自身の人に対する姿勢を見直すことが大切なのかも知れません。


ジョブスは、ピクサー・アニメーションスタジオのCEOも兼ねていました。
ピクサーについては次のように語っていました。


「我々は、十年をかけ、クリエイティブな人材とテクニカルな人材を育ててきた。外部から気軽に調達できるもんじゃないんだ。即戦力になるような人材なんて存在しない。だから育てるんだ」


やはり、人を育てるには、育てる側に粘り強さが求められると思います。


人を育てる立場、リーダーになる方は、能力の高さや成長の早さを評価されて、人の上に立つことを任される場合が多いものです。


しかし、誰もが最初から高い能力を持っている訳ではありません。
教育や指導をしてもなかなか結果がでない場合、つい相手のせいにしてしまいがちです。


そこで諦めずに、粘り強く育成を続けていく。

今は歩みが遅くても、きっと10年後には大きく育つと本気で期待し続ける。


人を育てるには、そのような姿勢が大切なのです。


「即戦力になるような人材なんて存在しない。だから育てるんだ」

新年のご挨拶

Planet Earth 1.0 - イラスト素材
(c) weekendloadイラスト素材 PIXTA


同じ地球の上で暮らす皆さん。

あけましておめでとうございます。

昨年は、宇宙の中を1年かけて太陽の周りを1回転するという長旅を、一緒にしてくれてありがとうございました。

やっぱり長旅でしたから、それなりにお互い色々ありましたよね。

楽しい事や悲しい事もあったけど、旅から学んだ事もあったと思います。

そして、くるっと1回転してまた同じところに戻って来ましたね。
これから、また1年かけて一緒に旅をしていきましょう。

お互い忙しいと思いますから、もしかしたら出会う事もないかも知れませんが、同じ地球の上に乗って旅をしているという意味では、私たちは仲間でしょう。

科学も進歩しているようですが、まだまだ、私たちは地球からはなれて生きることはできないですよね。

そう、もし地球の上の旅人同士でうまくいかないことがあっても、どっちみち一緒に旅をしなければならないんですから、出来るだけ仲良くできる方法を考えていけたら良いと思います。

地球は丸いから、その上で反対の道を歩んでもいずれはお互いが向き合う事になっちゃいますよね。

そして、地球の上で別々の道を歩いているつもりでも、結局は太陽の周りを1回転する旅をしている訳ですから、別々に見えても結局は同じ道なんでしょう。

だから、あまり難しく考えないで、宇宙の長旅を楽しんで行けたらいいですね。

昨年はありがとうございました。

あなたにとって、素敵な1回転になりますように・・・。

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