【ソーシャルMBAフォーラム】開催レポート 〜映画「隣る人」鑑賞・対話会

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2017年8月6日(日)に、私が主宰するグラスルーツ・シンクタンクYOU.lab多摩大学大学院の共催により、日本において社会的課題となっている「子どもの貧困・負の連鎖」に関する課題意識を深めることを目的としたイベントを開催しました。

本イベントのタイトルは以下のとおりです。


【ソーシャルMBAフォーラム】
児童養護施設ドキュメンタリー映画「隣る人」鑑賞・対話会
〜「子どもの貧困・負の連鎖」を断ち切るために、私たちにできることは何か?


当日は、様々なバックグラウンドの社会貢献に対する高い意識を持った、41名の方々にご参加頂きました。

この記事では、その様子をご報告させていただきます。


総合司会は、YOU.labプロボノパートナーの門間が務めました。


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・総合司会 YOU.lab 門間


本イベントは、多摩大学大学院研究科長の徳岡晃一郎教授によるご挨拶から始まりました。


徳岡教授からは、これからの時代は社会の構造そのものを変革するイノベーションが求められていること、そして、そのためにはMBAの活躍のフィールドを企業内に留めず社会に広げていくべきであることが、提言されました。


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・多摩大学大学院 研究科長 徳岡晃一郎教授


次に、YOU.lab代表として、私より、ドキュメンタリー映画「隣る人」をより深く鑑賞するための事前説明を行いました。
社会的養護や映画「隣る人」の製作の背景などについて、参加者の皆様にお伝えしました。


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・YOU.lab代表理事 五十嵐


その後、児童養護施設の日常を記録したドキュメンタリー映画「隣る人」を上映しました。



映画終了後すぐに、会場を暗くしたままの余韻の中で、映画を見終わった直後の心の揺らぎを率直な言葉にする参加者同士の対話セッション「アフター・シネマ・ダイアログ」を行いました。

参加者の皆様それぞれが自らの心に湧き上がった思いを語り合い、とても対話が盛り上がりました。

映画から得た多様な気付きを共有する貴重な時間となりました。


続いて、私より、課題提起として、「貧困で機能しない家族がもたらす『子どもの貧困・負の連鎖』の現実」をテーマに、以下のアジェンダでレクチャーを行いました。


1.「子どもの貧困」の現状

2.「貧困・負の連鎖」の現実

3.貧困な機能不全家族で育った子どもの自立の課題

4.「子どもの貧困・負の連鎖」がもたらす社会的損失


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その後、「アフター・シネマ・ダイアログ」のパート2として、「『子どもの貧困・負の連鎖』を断ち切るために、私たちにできることは何か?」をテーマに、参加者同士の対話セッションを行いました。


参加者には、児童養護施設で育った当事者の方、ボランティアとして当事者を支援している方や、福祉の領域で起業されている方など、多様な方々がいらっしゃいました。

それぞれの多様なバックグラウンドからの視点で様々な発言があり、会場で初めて出会った参加者の皆様同士が刺激を受け、創造的な「場」が生まれました。


最後に、私から、「簡単にはスッキリしないモヤモヤとした気持ちと向き合って頂きたい。答えのない宿題を贈ります。」とメッセージをお伝えして閉会としました。


「子どもの貧困・負の連鎖」は重層的な要因が絡んだ複雑な社会的課題であり、一朝一夕では解決に至る「正解」に辿り着けないでしょう。


多摩大学大学院で、徳岡教授と共に私の研究をご指導頂いた田坂広志教授は、こう語っていました。


「知能」とは、「答えの在る問い」に対して、いち早く答えを見い出す能力のこと。

「知性」とは、「答えの無い問い」に対して、その問いを、問い続ける能力のこと。


「知性」を発揮するグラスルーツ・シンクタンクYOU.labは、本イベントに参加して頂いた皆様との貴重な出会いを糧にして、引き続き「答えのない宿題」に向き合って活動していきます。

児童養護施設ドキュメンタリー映画「隣る人」鑑賞・対話会のお知らせ

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HRの経験で培ったスキルを、社会的課題の解決に活かすことを考えてみませんか?


HRのスキルとは、いわば「人の成長を促す力」です。

その力を、企業内に留めず、広く社会に解放すれば、もっと幸せな世の中を創れるはずです。


今、日本では、「子どもの貧困・負の連鎖」が社会的課題となっています。


まずは、その現実をより多くの方に知って頂くために、以下のイベントを多摩大学大学院品川塾と共催します。


【ソーシャルMBAフォーラム】

児童養護施設ドキュメンタリー映画「隣る人」鑑賞・対話会

〜「子どもの貧困・負の連鎖」を断ち切るために、私たちにできることは何か?


・日時:8月6日(日) 14時〜17時

・会場:多摩大学大学院 品川サテライト


本イベントの実施要項や主旨は、以下のリンク先の、イベント申し込みサイトをご参照ください。


http://socialmba.peatix.com

本イベントは、「ソーシャルMBAフォーラム」とは銘打っていますが、MBAに限定しないどなたでも参加できるオープンな場です。


私は、映画「隣る人」を数年前に見たのですが、当時とても感動したので、色々な方に見て頂きたいと思っています。

特にHRに関わる方は、映画「隣る人」を観て対話することで、「人間のプロ」として、「人間の本質とは何か?」という深い問いに対する洞察を深めることができると思います。


ぜひ、お友達とご一緒に参加したり、本イベントの情報をシェアして頂ければ幸いです。

生きることは変わること


「いつまでも自分らしく生きたい」 そんな風に思う人は多いと思います。


確かに、自分らしい個性を大切にして生きるのはとても大切なことかも知れません。 きっと、その方がのびのびと生きられると思います。


でも、「自分らしさ」にこだわるあまり変化することを拒んでしまうと、かえって生きるのが辛くなってしまう時もあるのではないでしょうか・・・?


「最もよい状態での『生きること』は、そのなかでは何ひとつ固定されることのない、流れるような、変化していくプロセスだ」


これは、カール・ロジャースという大変有名なカウンセラーの言葉です。 やはり、カウンセリングの大家だけあって、とても深い言葉だと思います。


この言葉から、私なりに感じる事があります。 きっと、「自分らしく」生きるとは、一つの生き方にこだわることではないのでしょう。


言い換えてみれば・・・。


「自分だけにしか出来ない変化を続けることが、『自分らしく』生きること」


奇しくも、高名な分子生物学者のルドルフ・シェーンハイマーも、カール・ロジャースと同じことを言っています。


「生物が生きているかぎり、栄養学的要求とは無関係に、生体高分子も低分子代謝物質もともに変化してやまない。生命とは代謝の持続的変化であり、この変化こそが生命の真の姿である」


ちょっと小難しい感じがする言い回しですが・・・。
カウンセラーも分子生物学者も、「生きる」ことを突き詰めた結果、「生きることは変わること」という同じ結論にたどり着いたというのは、とても興味深く感じます。


では、経営学の世界ではどうでしょうか?


コロンビア大学ビジネススクール教授のリタ・マグレイスは、ベストセラーとなった著書「競争優位の終焉」の中で、成功し続ける企業に関する研究成果を踏まえて、こう述べています。


「今日の戦略シナリオは、一時的な競争優位という概念に基づく必要がある。競争優位がもはや長期間持続しない場合、どこで、どう競争し、どうやって勝つかは、従来とはまるで異なる問題となるのである」


「私の研究によると、安定が正常で変化が異常というわけではない。実は話が逆なのだ。熾烈な競争環境では、変化ではなく安定こそがもっとも危険な状態なのである」


「安定という仮定はあらゆる間違った反応を引き起こす。既存のビジネスモデルに沿おうとする惰性と力を強める。人々の精神を型にはめ、習慣に従わせる」


つまり、変化のスピートが激しくなり続けるこれからの時代においては、組織も人も、一時的な成功に安住せず、変わり続けなければならないのです。

詳しくは「競争優位の終焉」を読んでいただければと思いますが、個人に対してはこう提言されています。


「ますます多くの人々のキャリアにとって『変化』が基準となる」


「私は、競争優位は衰えるものだと覚悟を決めるよう企業に勧めている。個人にも同じように腹を固め、そのつもりでキャリアを計画するよう勧めたい。要するに、現実的に見てキャリア・マネジメントに終わりはないということだ」


往々にして、変わることは痛みを伴うこともあるでしょう。
でも、生きることに希望を持ち続けるならば、誰でも、きっとその痛みを乗り越えて変わることが出来ると思います。


なぜなら、私たちが「生命」であるならば、先に引用したルドルフ・シェーンハイマーの言葉をこう言い換えることができるからです。


「変化こそが私たちの真の姿である」

新たな時代を生きるビジネスパーソンの「在り方」を確立する修行指南書〜「未来を構想し、現実を変えていく イノベーターシップ」


人が、まずは自分自身や家族が平穏に暮らせれば良いと願い、その実現のための行動を優先させることは、ごく自然なことでしょう。

しかし、自分の家庭の基盤となっている社会そのものに危機が訪れているとすれば、そのような行動も結局は無意味になってしまうのではないでしょうか?

例えば、原子力発電の問題。
福島のように、原子力発電のシステムから派生する事故が起これば、人は貧富や地位の差に関係なく放射能に侵される事態になります。

現代は社会の複雑性や相互依存性が高まり、環境変化のスピードが加速し、問題が大規模化しています。
日々ニュースを見れば、原子力発電以外にも、大げさに言えば人類の存続を脅かしかねないような大問題が、数多くあることを実感させられます。

つまり、個人として平穏な暮らしを築けたとしても、大局的な問題が解決されなければ、砂上の楼閣のように崩壊の脅威にさらされ続ける時代になっているのです。

では、そのような時代に、ビジネスパーソンの生き方はどうあるべきなのか?

その答えの一つが、多摩大学大学院研究科長の徳岡晃一郎教授が提唱する、「イノベーターシップ」だと思います。
徳岡教授は、新著「未来を構想し、現実を変えていく イノベーターシップ」の中で、「イノベーターシップ」のコンセプトについて、以下のように書いています。

「イノベーターシップとは、マネジメント、リーダーシップを超える第三の力である」
「それ(マネジメント・リーダーシップ)に対して、イノベーターシップは一歩先を行く。新しい世界や新しい社会を構想し、そこへ向けて自分がなすべきことを考え出し、主体的に実践していく力だ」

つまり、まず、自分や自分が所属するコミュニティが幸福になるためにも、理想的な社会の姿を自ら考え、大局的な視座に立ち、その実現のために「使命」を果たす行動をとることだと言えるでしょう。

例えば、企業の中では、自部門の業務を滞りなく進めるためのマネジメントを担い、さらなる改善に向けてリーダーシップを発揮することも重要でしょう。
しかし、前述のように社会の複雑性が高まっている時代には、会社そのものが常に脅威にさらされている状況になっているので、自部門の業務を平穏に進めることを優先していては、いずれ自分の首を絞めることになりかねないのです。

そのような状況から脱するには、やはり「イノベーターシップ」の発揮が必要になります。
では、そのためにはどうすれば良いのか?

徳岡教授は、同書の中で、イノベーターシップに必要な5つの力を挙げています。

・未来構想力〜大きな夢を描けるか
・実践知〜適時適切な判断を下せるか
・突破力〜「しがらみ」を打破できるか
・パイ(π)型ベース〜知見の深さと広さを併せ持っているか
・場づくり力〜人々をつなげ、知を共創するハブになっているか

イノベーションを起こす人材に必要な能力については、他にもいろいろなモデルがあります。

例えば、有名なクレイトン・クリステンセン教授は、著書「イノベーションのDNA」で、「破壊的イノベーターのための5つのスキル」を提唱しています。
その内容は、このブログでも以前紹介したので、過去記事を参照してください。

http://www.yuichi-igarashi.com/hr/2012/02/post-bf57.html


クリステンセン教授らのモデルでは、あくまでも「スキル」として、どちらかといえば「やり方」が主となっているように感じます。

それに対して、「イノベーターシップ」では、イノベーターとしての「在り方」を5つの力として問うているように感じます。
例えば、徳岡教授は、「未来構想力」について、こう書いています。

「未来のビジョンは理論や分析から出てくるものではない。またアイディアや技術などのシーズから始めるものではない。それは手段にしかすぎず、どんどん進化してしまう。未来とは予想するものではなく実現するものだという立場に立てば、それは自分の『思い』からしか出てこない」

言い換えれば、イノベーターシップの基盤は「信念・使命感」だと言えるでしょう。
まずは、「信念・使命感」を持ちビジネスパーソンとしての「在り方」を確固にした上で、「スキル」を生かしていくべきなのです。

クリステンセン教授のモデルも意義あるものだと思いますが、やはり、最も大切なのは「在り方」の方ではないでしょうか。

一般的なビジネスパーソンにとって、「新しい世界や新しい社会を構想」し、自らの「在り方」を問い直すことは、なんとなく日々の生活からはかけ離れたことのように感じられるかもしれません。

しかし、複雑化した現代社会においては、「人類を守れなければ、自分も家族も守れない」状況になっていることは確かだと思います。

徳岡教授はこう書いています。

「スケールの大小はあっても、自分たちのコミュニティを本当の意味で救おうとする動機は、誰しもが持っているものではないだろうか」
「そう、イノベーターシップとは、人間らしさを発揮することそのものなのだ。それをより大きな土俵で繰り広げることが今は期待されている」

「イノベーターシップ」を発揮するビジネスパーソンが増えていけば、世の中はより良い方向に動いてくと思います。それは思うほど難しいことではなく、人間としての自然な感覚に立ち戻れば、誰にでもできることのように思えます。

同書には「イノベーターシップ」を磨くための、具体的なトレーニング方法もとてもわかりやすく書いてあります。
より多くの人に読まれ、「イノベーターシップ」を発揮する人が増えていくことを願っています。

「共創優位の志」が事業を成功に導く

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これからの時代の事業は、「戦略」よりも「志」の重要性がますます高まっていく。

先日、オリジナルブランドの衣料通販サイト『ファクトリエ』を経営する山田敏夫さんからお話を聴く機会があり、そう実感しました。

山田さんはとても情熱的で、人を強く惹き付ける魅力がある方です。
以下の、ファクトリエのメイキングムービーをご覧ください。


山田さんは、2012年に、資本金50万円で一人でオンラインショップ「ファクトリエ」を立ち上げました。
現在では、多くのファンに支持される人気ブランドに成長しました。
山田さんにとってはまだまだ成長の途上の段階ではありますが、多くのベンチャー起業が失敗する中で、現時点では一定の成功を遂げたと言っても良いと思います。

では、その成功の要因は何なのでしょうか?

その答えを私なりに一言でいえば、「志の共創優位性」です。
(冒頭に掲げた画像を参照してください)

事業を成功に導く「志」とは、世の中に役立つ(社会性)、自らの腹の底から沸き上がった信念(自己信頼)であり、他の人が自然と手伝いたくなる(他者共感)ようなもと言えるでしょう。

「ファクトリエ」の事業については、以下の記事を参照してください。

・工場直販ブランド「ファクトリエ」で世界に誇る純日本ブランドを展開

「日本から世界的ブランドを生み出す」

これが、山田さんの「志」です。
自分の財産を殖やしたいとか儲けたいという事ではなく、「日本」という視座に立った夢が「志」となっています。

山田さん自身は社会性は意識していないと言っていますが、個人の私利私欲を超越しているという点では、その志には社会性があると思います。

ファクトリエの事業を通して、結果的に、高い技術を持ちながら経営危機に陥っていた地方の工場が再生し、地域社会全体の活性化や繊維産業の再興に繋がっていきました。
山田さんは、工場を対等なパートナーとして尊重しています。

戦略論の大家であるマイケルポーターは、競争優位性の要素として「買い手の交渉力」という言葉を使っていますが、買い手としての山田さんは工場側に価格の決定権を委ねています。
それは、他社との価格競争の優位性を築くために、仕入れ値を「買い叩く」ことでコストを下げるのではなく、工場とともに「本当に良い服」を創る「共創」の関係性を重視しているからなのです。
やはり、山田さんの「志」には社会性があると思われます。

さらに、山田さんはその「志」を必ず実現できるというぶれない確信をもって事業に取り組み続けています。
山田さんはそれを「沸点」という言葉に表しています。

何か成し遂げたい志があり、それが自分の腹の底から出たものであり、その想いの強さのエネルギーが「沸点」という言葉に象徴される臨界点のようなものを超えていれば、様々な困難や迷いも最終的には乗り切る事ができる。
そして、必ずその志を実現できる。

山田さんはそのようなことを、熱く語りかけてくれました。

やはり、自分にはその志を実現できる力があるという「自己信頼」は、事業を成功させるために欠かせない要素と言えるでしょう。

沸点を超えた山田さんは、まず一人で「ファクトリエ」を立ち上げましたが、「日本から世界的ブランドを生み出す」という志に共感した多くの人々が、無償でボランティアスタッフとして仕事を手伝ってくれたそうです。
他の企業の中で働きながら自らの仕事に意義に疑問を感じているような人々が、山田さんの部屋に集まり、夜遅くまで様々な仕事をしてくれたそうです。
それは、山田さんの掲げた「志」がお金では変えない魅力を放ち、多くの人々の共感を得たからだと思います。

事業の立ち上げ時には、特に大きなエネルギーが必要で、一人でできることには限りがあります。
ファクトリエの創業時の状況を聴くと、「他者共感」を得られるような強い求心力のある「志」が事業を成長させる大きな力となる事がわかります。

私も、直に山田さんから直にお話を聴き、エネルギーに心を揺さぶられる感じがしました。
伝わってきたのは、「とにかく良い服を創りたい」「とにかくファッションがが好き」という理屈抜きの愚直な情熱でした。

もちろん、「良い服を創る」ためには、ビジネスモデルや戦略を考える事も必要です。
しかし、「共創優位の志」のレベルによって、商品・サービスや顧客とのコミュニケーションなどの細部に至る繊細なポイントに差が出てきます。
そして、これからの時代は、その何らかの繊細なポイントが顧客の共感を呼び、「ブランド」となっていく傾向が強くなるでしょう。

山田さんのような、「志の共創優位性」で事業を成功させるタイプの起業家が増えれば、世界経済も良い方向に活性化していくと思います。

«「なぜ人材育成をしてもパフォーマンスが上がらないのか?」〜2015年5月11日(月)ATD INTERNATIONAL NETWORK JAPAN セミナーのご案内

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